研究課題
近年、重症軟部組織損傷に対して線維芽細胞増殖因子(FGF)を用いた治療が改善に寄与すると報告されているが、依然として虚血の結果起こる壊死や感染の合併が多い。FGFは増殖作用を発現するためにヘパラン硫酸が必要であることが知られている。ヘパラン硫酸は全身に普遍的に存在し微小循環の恒常性維持に不可欠であるが、加齢により減少することが知られており、その減少自体が局所循環を低下させ加齢による皮膚損傷治癒が遷延する原因となっていると考えられている。本研究ではヘパラン硫酸が皮膚損傷治癒に関与しているのかを検討する。本研究では皮膚打ち抜き損傷モデルを用いる。このモデルは麻酔下で剃毛したマウスの背部にバイオプシーパンチを用いて直径4mmの打ち抜き損傷を作成する。作成したマウスをSalineによる未治療群、トラフェルミン噴霧群、ヘパラン硫酸塗布群、トラフェルミン噴霧とヘパラン硫酸塗布の併用治療群に分ける。解析方法はまず肉眼的観察を行い、損傷作成12時間、1、3、7、14日後に肉眼的に損傷部面積の閉鎖率を比較したところ併用治療群において閉鎖率が高いことが確認された。組織学的には術7日後に肉芽組織を確認すると、未治療群に比しトラフェルミン治療群ならびにトラフェルミン噴霧とヘパラン硫酸塗布の併用治療群では有意に肉芽組織が増加していた。そこで、単施設、2群並行、単盲検、前向き無作為化対照パイロット試験を、皮膚採取を受けた12名の患者を対象として実施した。患者は、bFGFで治療する対照群(n=6)と、bFGFとヘパリンで治療する介入群(n=6)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。創傷面積と創傷面積の変動は、上皮化生に要した日数と同様に、術後1週間ごとに評価したところbFGFとヘパリンの併用が、bFGF単独よりも創傷治癒をより効果的に促進する可能性を示した。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (44件) (うち招待講演 1件)
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