研究課題/領域番号 |
21K09082
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
内田 直樹 昭和大学, 医学部, 教授 (00286775)
|
研究分担者 |
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 教授 (20301509)
松山 高明 昭和大学, 医学部, 教授 (40349113)
八木 正晴 昭和大学, 医学部, 准教授 (40338520)
原野 康平 昭和大学, 医学部, 助教 (30914220)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 脳低温療法 / 薬物代謝 / 鎮静薬 / ミダゾラム / 復温期 |
研究実績の概要 |
脳保護作用や頭蓋内圧低下作用を目的とする脳低温療法は,低温状態の維持期において持続的な鎮静薬の静脈投与により鎮静状態を維持し,一定期間の低温処置を行った後で体温レベルに復温後,鎮静薬の持続投与は終了するが,投与終了後も鎮静効果が持続する過鎮静の発現が臨床上問題となっている.過鎮静の発現防止には鎮静薬の血中濃度の詳細なモニタリングが有効であるがこれまでに詳細に血中濃度を解析した研究報告はない.本研究は脳低温療法の復温期における鎮静薬の薬物動態を詳細に分析するとともに,患者の臨床的多様性を考慮した適切な鎮静薬投与管理アルゴリズム(投与管理計画)の策定に寄与する情報収集を行う目的で計画した. 脳低温療法の復温過程では鎮静薬は持続的に同一薬物量が点滴静注投与されるため,薬物は定常状態となっているものと推察され,薬物動態学的に薬物のクリアランスに変動は生じていないものと考えが,復温による体温上昇に伴い鎮静に用いられるミダゾラムの血中濃度上昇が報告されている。 本研究の1年目の検討として,脳低温療法の鎮静に用いられるミダゾラムの薬物代謝酵素に対する復温による体温変化の影響の有無を,ヒト薬物代謝酵素を用いたin vitro実験系で検討した。その結果、ミダゾラムの1’位水酸化活性は両温度条件で同様の値を示し、差は認められなかった。 そこで本研究の2年目の検討として,脳低温療法施行患者から復温経過中の血液を採取し,ミダゾラム血中濃度の復温による体温変化の影響を検討した。昭和大学の倫理委員会にて脳低温療法施行患者における鎮静薬血中濃度の復温の影響を評価する臨床研究実施計画書の審査・承認を受け試験を実施した。 現在、取得検体の分析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の2年目に計画していた「臨床研究パート」は、研究実施に伴う臨床試験実施計画の倫理委員会への付議を行い、問題なく審査・承認を取得した。 一方、臨床研究パートは、実務担当の救急災害医学科の医師の協力の元で実施している。 本研究の実施期間中の過去3年において、新型コロナ感染患者の対応のため、臨床研究パートを担当する救急災害科(昭和大学病院 救命救急センター)は多忙を極めており、本研究症例への研究組入れの同意説明・取得に困難を極めているが、これまでに9症例の検体採取を完了した。 今後も継続して本研究対象患者からの研究参加同意の取得、検体採取を行い、取得検体の薬物濃度の解析を並行して実施していく予定であり、進捗に問題はないと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
「臨床研究パート」の実施において、脳低温療法施行患者より採取された血液検体の薬物濃度分析を、研究分担者である法医学教室の担当者と進めていく。加えて、更なる患者検体採取を救急災害医学科の担当にて進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画2年目に計画していた「臨床研究パート」の倫理委員会への申請に伴う準備のため、文具等の消耗品の購入ならびに血液検体の採取関連消耗品の購入を行ったが、新型コロナ感染拡大の影響のため、十分な症例組入れができなかった。検体の血中濃度の測定においては、採取した血清の抽出作業や機器による測定に要する消耗品の使用ならびに測定機器の調整、メインテナンス等が必要であるため、作業効率を考えるとある程度まとまった検体数を同時期に処理する必要がある。一方、前述したように、新型コロナ感染拡大に対する研究分担者(救急災害医学科)の対応のため、十分な症例確保ができなかったことから、採取検体を計画に従い冷凍保存し、今後に追加で得られた症例検体と合わせて検体処理を行うこととしたため、今年度においては当初予定した研究予算の執行が下回った。 また、コロナ感染拡大対応のために、本研究に関連する学会等への出席を自粛したことから、計上した交通費の使用がなく、使用額に差額が生じた。 次年度においては、新たに獲得した症例検体とともに、順次測定を進めていくことから、検体測定に要する消耗品、試薬等の購入に研究費を使用する。
|