研究課題/領域番号 |
21K09085
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
森田 昭彦 日本大学, 医学部, 兼任講師 (80547117)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 急性脳炎 / 急性脳症 / 定量脳波 / power spectrum / coherence / functional connectivity |
研究実績の概要 |
急性脳炎・脳症は、診断や治療の遅れが転帰不良に直結する神経救急疾患である。しかし、病初期に個々の患者の神経損傷の程度を評価することは難しい。外傷性脳損傷や脳卒中などによる意識障害例を対象とした定量脳波解析を用いた検討から、脳内の機能的連絡の低下が神経学的予後と関連することが報告されており、急性脳炎・脳症例において定量脳波を用いた評価が神経損傷の指標となる可能性がある。 急性期にデジタル脳波計による脳波検査が施行された単純ヘルペス脳炎(HSE、n=6)、抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎(NMDARE、n=7) 、無菌性髄膜炎(n=59)を対象とし定量脳波解析を行った。デジタル脳波計を使用し国際電極配置法(10/20法)に従い脳波を連続記録した。周波数帯域をβ、α、θ、δの4帯域に区分し、アーチファクトのない覚醒時脳波を20秒間選択し、高速フーリエ変換によるpower spectrum解析と、α帯域とθ帯域のcoherence解析を実施した。 power spectrum解析では、δ帯域の絶対パワー値の総和とspectral ratio(β帯域とα帯域の絶対パワー値の総和/θ帯域とδ帯域の絶対パワー値の総和)が3群間で有意に異なり、post-hoc test でHSEと無菌性髄膜炎群での差が有意であった。coherence解析では、α coherenceの中央値とα coherence<0.5の領域の割合、θ coherenceの中央値と最小値、θ coherence<0.5の領域の割合が3群間で有意に異なり、post-hoc test でHSEと無菌性髄膜炎群での差が有意であった。 転帰との関連ではHSEとNMDARE群の退院時modified Rankin Scaleの悪化とともにα coherence<0.5の領域の割合が増加する傾向を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に、すでに蓄積されている単純ヘルペス脳炎(HSE)、抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎(NMDARE)を含めた急性脳炎・脳症例と無菌性髄膜炎例を対象とし、定量脳波解析を実施し、有用な神経生理学的評価指標を検索することを予定していた。十分な症例数ではないが、計画通り、抽出されたHSE(n=6)、NMDARE(n=7) 、無菌性髄膜炎(n=59)例を対象とし、定量脳波解析を実施し、有用な神経生理学的評価指標(spectral ratio(β帯域とα帯域の絶対パワー値の総和/θ帯域とδ帯域の絶対パワー値の総和)やα coherence<0.5の領域の割合など)が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
単純ヘルペス脳炎例や抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎例の急性期髄液中の既知の神経損傷に関連したバイオマーカー(neuron specific enolase(NSE)やS100β、Tau protein、Glial fibrillary acid protein(GFAP)など)を測定し、神経生理学的評価指標との相関を検討する。 臨床情報(性、年齢、罹病期間、治療内容など)、一般臨床検査結果、神経生理学的評価指標、既知の神経損傷に関連したバイオマーカーを用いた急性脳炎・脳症の転帰予測モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定された金額よりも値引きされたため。 次年度に物品購入に使用する予定です。
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