研究課題/領域番号 |
21K09099
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
押野 悟 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (40403050)
|
研究分担者 |
谷 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20598370)
藤田 祐也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20839097)
何 馨 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (40895273)
三浦 慎平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50869716)
細見 晃一 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800)
江村 拓人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70891505)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 振戦 / 機能神経外科 / 電気刺激療法 |
研究実績の概要 |
本研究は肢位によって変化する振戦のメカニズムを解析し、それをもとに外科的治療の補助療法として経皮的電気刺激の応用を試みるものである。研究は、①肢位による振戦の変化を定量評価する、②振戦が増強もしくは軽減する肢位での皮質活動の違いを脳磁図で計測解析する、③上肢筋の緊張状態を経皮電気刺激で調整することで振戦に対する抑制効果を確認するという3つから計画された。 2021年度はまず大阪大学医学部附属病院倫理委員会に本研究内容を申請し、承認を得た。①の評価について試行錯誤した結果、3軸の回転加速度を計測できる小型センサー(Xsens Awinda 慣性センサー)を複数用いる手法を選択した。つまり、手背、前腕、上腕の軸に沿って上記センサーを装着し周波数や速度とそれらの方向を計測することで、各肢位で振戦の要因となる筋が同定できると考えた。また③の経皮的電気刺激では、既存の誘発筋電図計を用いて、短期的な効果を探索的に調べる方針とした。いずれも外来通院患者が対象であったため、コロナ禍の影響で2021年12月からの実施となった。尚②の脳磁図計測は、検査室の換気の問題から2021年度は実施しなかった。 2022年3月までに5例で①と③を実施した。①では各部位での周波数や回転速度、パワースペクトラムなど種々のパラメータが算出できるため、どれが有用なバイオマーカーとなるか検討中である。現時点では前腕の角速度パワー(deg**2/Hz)に肢位での変化が反映されている印象を持っている。また経皮電気刺激では、1例が上腕三頭筋の刺激で、1例が前腕伸筋群の刺激で振戦が軽減し、後者の1例では前腕の角速度パワーでは70%の抑制効果がみられた。現時点では、計測や刺激で問題となる事象はなく、2022年度以降も同様に研究を進める方針である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象は病院の外来患者だったためコロナ禍の影響で実施が遅れたが、2022年3月までに5例の振戦の定量評価と電気刺激の効果が確認できた。現時点では、実施に際して大きな問題はないため、2022年度以降もこのまま継続する方針である。 一方、脳磁図は計測室の換気の問題を危惧して2021年度は中止した。今後、コロナ禍が安定した時点で、脳磁図の計測を開始する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
複数の小型回転加速度センサーでの振戦の定量評価ができる見通しが立った。今後は、同様の計測を継続し、臨床スコアとの対比などから、算出されるパラメータのうちバイオマーカーとなりうる指標を選定したい。また誘発筋電図計を用いた電気刺激では、想定した近位筋以外に、前腕伸筋でも効果がみられた。それらの違いがどこから生じるかも含め、より多数例で、また同一例でも複数回実施し、振戦の抑制効果を検証したい。脳磁図計測はコロナ禍が落ち着き次第開始する予定だが、振戦に対する肢位の影響や電気刺激の所見を検証する方向性で項目を修正して計測したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
脳磁図計測費(1件5万円)を予定していたが、コロナ禍で実施できなかったため、次年度に繰り越した。現在、脳磁図の対象となる振戦患者は15から20例の見込みであり、繰越分は脳磁図計測を中心に使用する予定である。
|