研究課題
本研究では、「慢性貧困灌流において低下した脳血流による不十分なラジエータ効果が存在するときに、脳脊髄液流が能動的にラジエータ効果を担っているのかどうか」を明らかにする。2023年度は、脳主幹動脈慢性閉塞狭窄性病変の原因となる60歳代の動脈硬化性病変10例と40歳代の虚血発症もやもや病6例を対象とした。全例に術前に15OガスによるPETを用いて貧困灌流の有無を、3T MRI MRSを用いて脳温度マップを、7 Tesla MRIで取得した拡散強調画像で得られたIVIM解析にてCSF dynamicsを作成した。これらの症例に対して、上記の検査に加えて神経心理検査として、Wechsler adult intelligence scale-revised (WAIS-R)、Wechsler memory scalerevised (WMS-R)、Rey testを行い、認知機能を測定した。拡散強調画像から得られたIVIM解析は、以下の順で解析した。1)脳室・脳槽内脳脊髄液信号計測と信号減衰曲線を用いたIVIMパラメータ推定、2) 脳室・脳槽内脳脊髄液のIVIMパラメータの統計学的比較、3) 脳実質内脳脊髄液信号計測と信号減衰曲線を用いたIVIMパラメータ推定、4) 全脳脳脊髄液動態マップの作成。2021年度と合わせた60歳代の動脈硬化性病変計28例と40歳代の虚血発症もやもや病15例から得られたデータでは、「1) 脳温度と脳脊髄液動態の関係は有意な正の相関にある、2) 1)の関係は動脈硬化性病変より虚血発症もやもや病で有意に強い、3) 1)の関係を認知機能低下例ほど、有意に脳温度が高く、脳脊髄液動態の変化が強い。」という結果になった。
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