研究実績の概要 |
ヒト脳を対象とし、診療を通じて得られる神経画像情報および生理学的情報を用いて、治療前後で視床腹側核、視床腹部を中心に、小脳、大脳基底核、大脳皮質の役割を検討する研究を行なっている。2021年度には、視床前腹側(VA)核、視床VL核と視床腹部(posterior subthalamic area,PSA)の振戦治療標的が集まる組織空間を"tremor target box"として提唱し、VA, VL, PSAさらに吻側不確帯(caudal zona incerta, cZI)への淡蒼球系及び小脳系の投射線維を可視化した病態モデルを報告した(戸田 他 脳神経外科[医学書院]2021; Sugiyama, Toda; Front Hum Neurosci 2022)。2022年度にはこれらの内容を関連する脳神経外科の国際学会で講演した(World Society of Stereotactic and Functional Neurosurgery 2022, Asian Australasian Congress of Neurological Surgery 2022)。また2022年度の研究は、脳深部刺激療法をうけた患者において、臨床的な改善度を複数の刺激領域で比較したデータから、刺激最適部位を想定し、その可視化を行った。具体的には脳深部刺激療法の再調整が必要であった症例を中心にデータを解析し、より治療効果の得られた刺激部位や刺激条件の可視化から、刺激最適部位としてcZIの重要性を確認した(杉山、澤田、戸田ら 機能的脳神経外科, 投稿中)。さらに刺激最適部位を含む"tremor target box"とその周辺の振戦関連構造に投射する小脳、大脳基底核、大脳皮質間との連携を可視化するデータ解析までを行なった(投稿準備中)。振戦に関係する大脳ー視床、大脳基底核ー視床、小脳ー視床、さらに視床内の連絡経路の可視化と臨床症状改善との相関を検討する検証系を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定位脳手術症例データを用いた磁化率マッピング画像、拡散テンソル画像、LeadDBSの3次元神経回路解析法が確立された。視床・視床腹部、さらに小脳視床路、淡蒼球視床路の可視化され、「パーキンソン病と本態性振戦に対する後腹側視床領域, 淡蒼球視床路, 脚橋被蓋核の定位脳手術」(脳神経外科、医学書院, 2021)と"A Single DBS-Lead to Stimulate the Thalamus and Subthalamus: Two-Story Targets for Tremor Disorders, Front Hum Neurosci. 2022; 16: 790942"を発表した。また刺激最適点に関する研究を報告した。さらに、この画像解析法を用いて、振戦例の視床腹部を検証したデータを「パーキンソン病に対する視床下核脳深部刺激療法再調整例におけるイメージガイド下プログラミングの有用性:2症例の検討」として現在「定位・機能神経外科」誌に投稿し、さらにより多くの症例を検証したデータについての投稿準備を行なっている。
|