研究実績の概要 |
脳動脈瘤の破裂の原因として、炎症、特に好中球の関与が考えられる。そこで、今年度の計画として、血管に炎症を起こさせることで、動脈瘤の破裂に同様な影響を及ぼすか、その際に炎症、特に好中球の役割について検討することとした。血管に起こさせるために、高脂血症による動脈硬化病変を形成させ検討することにした。LDL受容体およびApobec1を欠損させたマウス(Ldlr-/-, Apobec1-/-)を用いることによって血中の脂質レベルを高くし、そのマウスに実験的に脳動脈瘤を誘導することによって、脳動脈瘤の発生および破裂の変化をみた。 実験開始の1週間前に片腎を摘出した。脳底クモ膜下腔に豚膵エラスターゼを投与し、脳血管を脆弱化した。また、エラスターゼ投与後、皮下に徐放性のデスオキシコルチコステロンペレットを留置するとともに、飲水として1%食塩水を摂取させることで高血圧を誘導した。実験開始から3週間後に脳組織を摘出し、脳動脈瘤の有無およびくも膜下出血の有無を評価した。また、脳動脈瘤モデル作製後の脳血管の形態変化を経時的に観察をした。 コントロールとして用いたC57BL/6群は17匹中10例においてくも膜下出血がみられ、また4例に未破裂脳動脈瘤があった。一方、Ldlr-/-, Apobec1-/-群は28例中1例においてのみクモ膜下出血がみられ、10例に未破裂脳動脈瘤がみられた。脳動脈瘤モデル作製前は両群とも脳血管の形状に差は見られなかったが、Ldlr-/-, Apobec1-/-群は脳動脈瘤モデル作製により膠原線維に富む血管構造となっていた。 【まとめ】Ldlr-/-, Apobec1-/-群はクモ膜下出血がほとんどみられず、中膜に膠原線維に富む構造に構造変化をすることで脳動脈瘤破裂に対し保護的に作用する可能性が示唆された。
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