研究課題/領域番号 |
21K09124
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
梅村 和夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40232912)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / マウス |
研究実績の概要 |
我々はこれまで頭蓋内における出血のリスク因子または予防効果を解明するために、う蝕原因菌をはじめ抗血小板薬の使用など、様々な試みを行ってきた。今年度はヒトの病態に近い高コレステロール血症を発症するLdlr -/- /Apobec1 -/- マウスを用い脳動脈瘤発症に関わる検討を行った。対照群として用いたC57BL/6は動物モデル作製後3週間の観察期間中、くも膜下出血を発症した動物は58.8%であった。一方、高LDL血症を発症しているLdlr -/- /Apobec1 -/- マウス群ではわずか3.5%しかくも膜下出血を発症しなかった。従来動脈硬化の原因として悪玉と考えられてきたコレステロールが、炎症等の障害時の細胞修復に重要な役割を果たストいう報告も近年多く、脳動脈瘤に対しては高LDLがむしろ保護的に働くのではないかという結果が得られた。次に、脳動脈瘤モデル作製前の脳血管の形態を比較したところ、Ldlr -/- /Apobec1 -/- マウス群および対照群とでは血管構造に大きな違いはなかった。しかし、脳動脈瘤モデル作製1週間後では対照群と異なり、Ldlr -/- /Apobec1 -/- マウス群のウィリス動脈輪、中大脳動脈など、主要な血管において膠原線維が豊富な構造に変化していた。我々は非侵襲的にマウスの脳血管の経時的変化を観察する機材および技術を有しており、脳動脈瘤モデル作製前、1、3、7、14および21日目に3T MRIを用いて脳血管の形態の変化を観察し、どのタイミングで動脈瘤の形成および破裂に対し大きな変化が起こるのかを探索する予定である。さらに、脳動脈に大きな変化があったポイントが同定できたら、そのタイミングで脳血管を採取し、病理標本を作製し抗体を用い観察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性の反応が脳動脈瘤の破裂にどのような影響が表れるかは、この研究の重要な目的の1つとなっている。血管に炎症を引き起こす病態としての動脈硬化がどのように影響するかを検討したことは、メカニズムの解明につながるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
動脈瘤への影響を捕まえることができたので、その部位を免疫組織学的に検討を進めることでメカニズム解明に近づけるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、教育、大学運営に時間がとられ、また、働き方改革で時間が自由に使用できない状況であった。成果は十分出ているが、当初の計画通りにさらに実験を進めることができなかったため。
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