研究実績の概要 |
ヒトグリオーマのSGK阻害剤に対する反応を調べるため、細胞株T98GにSGK阻害剤gsk650394を投与したところ、阻害剤濃度の上昇と共に増殖は抑制されたが、50%抑制量(IC50)は100uM以上であった。また、別の細胞株F98を用いて同様の実験を行った場合はIC50は約10uMであった。さらに、T98G細胞ではgsk650394は細胞増殖に影響を与えない濃度で細胞移動を抑制した。これらの事から、SGK1の阻害はグリオーマの細胞増殖や移動能を抑制することが示唆された。続いて、ミクログリアのグリオーマに与える影響を検討するため、本申請課題でグリオーマ/ミクログリア間をつなぐ標的因子として注目しているIL-4の発現検討を試みたが、種々のコンディションでPCRでIL-4の発現が確認できなかった。脳内でIL-4の存在が認められるため、ミクログリア細胞株BV-2にIL-4 10ng/mlを投与してもミクログリアのM2極性のマーカーであるArg-1の発現変化は認められなかった。一方、SGK1破壊型BV-2細胞(Asai, Inoue et al 2018 IJPPP)にIL-4を投与したところArg-1遺伝子発現の増加傾向が認められた。これからミクログリアのIL-4依存性の極性変化にSGK1が関与する可能性が示唆された。続いてグリオーマ細胞株T98GにIL-4を投与し増殖を確認したところ、IL-4 30ng/mlまで増量しても大きな増殖変化は認められなかった。これらのことから、少なくともT98G株では当初予期したようにIL-4による増殖の増強が起こらないことが示唆された。これが一般的な事実だとすると、ミクログリアとグリオーの関係はIL-4を介しては特にないことになる。また、SGK1はIL-4の発現にあまり関与せず、ミクログリアの極性には関与する可能性が示唆された。
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