研究課題/領域番号 |
21K09138
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 太一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40457247)
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研究分担者 |
濱 聖司 広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (40397980)
新田 雅之 東京女子医科大学, 医学部, 特任講師 (70588269)
福井 敦 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80746800) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Survivin / 悪性神経膠腫 / バイオマーカー / Vimentin |
研究実績の概要 |
本年度はこれまで蓄積したグリオーマ症例の血清検体を解析し、グリオーマ症例(WHO悪性度分類 grade 2~4)と健常人の血清においてVimentinの濃度の差をELISA法を用いて測定したところ、Wilcoxonの検定を行ったところ、グリオーマ患者と健常人の血清Vimentin濃度の間に有意差を認めた(p <0.0001)。グリオーマ患者の各グレード間(グレード 2, 3, 4)では有意差は認めなかったが、グレード4において濃度が高い傾向を示した。血清Vimentin濃度のROC解析では2.9ng/mlをカットオフ値とした時にAUC=0.93(感度86%、特異度100%)と高い検出率で健常成人ボランティアとグリオーマ患者との鑑別が可能であることが判明した。(p<0.0001)。さらに免疫染色による評価では、Survivinの発現の程度は、血清Vimentin濃度と有意な相関を認め、Survivinの発現が血清Vimentinの発現の調整に関わることが示唆された。一方でVimentinの血清濃度とVimentinの免疫染色の発現の程度は有意な相関を示さなかった。 Vimentinは、他の癌腫においてSurvivinから制御を受けていることが報告されており、グリオーマ患者における血清Vimentin濃度の上昇においても、Survivinが何らかの関与をしている可能性があると考えている。我々は、以前Survivinの発現が標準的な治療を受けた膠芽腫の生存予後と相関することを論文で報告しており、今回の結果から血清中のVimentin濃度も膠芽腫の治療反応性、生存予後と相関する可能性が高いと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていたグリオーマ症例の血清の採取は目標の症例数を達しているため
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今後の研究の推進方策 |
引き続き臨床検体の蓄積を進めていくとともに、これまで測定が終了した臨床検体において、本年度は、データの再現性があるかどうか、再測定を行い、我々の計測方法の妥当性を証明する予定である。また、本年度は蓄積した症例の中で、特に膠芽腫の症例に注目し、膠芽腫患者の生存予後と血清Vimentin濃度との間に相関があるかどうかの検討も加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の研究に関して、患者血清の回収に関しては、当施設の臨床検査部からの全面的な支援をうけることができたため、採血管等の経費が抑えられたことが一つ 理由に挙げられる。また、今年度の実験に関しては、これまで購入していた実験試薬、実験器具を一部流用することができたため、経費を抑えることができた。 一方でVimentin濃度測定用のELIZAキットは、1キット10万円前後と高額であるため、抑えることができた経費を来年度以降に有効に使用する計画である。一方で 今回の症例数53例に加えて、次年度でさらに30例程度の症例追加を予定しているため、次年度に繰り越した経費を有効に使用する予定である。
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