研究課題/領域番号 |
21K09140
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
武藤 淳 藤田医科大学, 医学部, 講師 (30383839)
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研究分担者 |
峯 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (10306730)
金蔵 孝介 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10508568)
Cabral Horacio 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10533911)
上甲 眞宏 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20440729)
廣瀬 雄一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60218849)
井上 辰志 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (80304434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳脊髄腫瘍 / インドシアニングリーン / 術中蛍光造影 / ドラックデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の根治手術において最も重要なことは切除範囲の決定と病変の完全な切除で あり、腫瘍細胞の遺残を防ぐために、近年、術中蛍光診断技術が開発され、適応が拡大している。 しかし、脳腫瘍において確立された蛍光診断技術は悪性神経膠腫に対する5-ALAのみである。 我々は、近赤外域蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を利用し、基礎研究と数報の臨床報 告を元にしたICG投与プロトコールを作成し、脳脊髄腫瘍の術中蛍光診断技術を開発し、予備的に その有用性を確認した。重要なことに5-ALAが神経膠腫特有の代謝系に依存するのに対し、ICGの 蛍光は腫瘍における血管透過性の異常によるEPR効果 (Enhanced permeation and retention effect)に依存することが示唆され、神経膠腫以外の脳腫瘍への応用が可能である。また、EPR効果 を利用し、ICGをキャリアとした脳腫瘍へのドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用が可能である。 臨床使用可能なNanostar block polymersを新しいキャリアとして調製していく。本研究ではICGによ る脳脊髄腫瘍の術中蛍光診断法の確立とICGをキャリアとした脳腫瘍の新規治療法樹立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
脳腫瘍、脊髄腫瘍に対して、ICGを術前または、術中に投与し、手術中に近赤外線を照射することで、腫瘍に貯留されたICGの蛍光発光を確認し、リアルタイムに腫瘍局在を確認しながら、手術を行う方法を開発している。様々な腫瘍型に対して、ICGを投与し、投与量、投与タイミングを変更し、至適な投与条件の検討を行っている。書類申請時には、84例の経験であったが、本報告書作成時点(2022年5月1日)は127例の症例を経験した。元々、肝細胞癌や肺癌などにもICGによる術中蛍光造影が用いられていた、Second window ICG法という方法で、手術1-3日前に、ICGをそれぞれの腫瘍型に応じて、至適なタイミングと量を投与し、手術中に観察を行った。このSecond window ICGを使用し、転移性脳腫瘍に対する手術成績と経験を2021年1月1日に、Neurosurgical focusに出版した。 (DOI10.3171/2020.10.FOCUS20767) Second window ICG 法は、転移性脳腫瘍の場合は、観察24時間前に、5.0mg/kg投与を行うプロトコールで、手間がかかった。そこで、我々は投与量を減らし、また、手術中に投与をできる量とタイミングを開発した。Delayed window ICG 法と名付けた。手術中の観察1時間前に0.5-1.5mg/kg投与し観察を行う。脊髄神経鞘腫に対する手術成績と経験を2022年1月1日にNeurosurgical focus (https://doi.org/10.3171/2021.10.FOCVID21158)に出版した。 腫瘍型によって、最適な投与量と投与タイミングがあると考えられ、脳腫瘍、脊髄腫瘍のそれぞれについて、検証、解析を引き続き行い、報告を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在、腫瘍型に応じた投与条件の検討をし、そして、結果をまとめているので、その方針を引き続き継続する。そして、論文化していく。また、ICGをキャリアとした脳腫瘍へのドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用 については、共同研究者と進めている。具体的には、ドラッグデリバリーシステムに使用するポリマーの作成と、ポリマーへの薬剤の結合、そして、抗腫瘍効果の評価を行っている。次年度には、ある程度報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎研究と臨床研究の継続のため
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