研究実績の概要 |
最終年度である本年はベルリン青染色法を用い、細胞内の鉄の蓄積を検出した。まずは、脳虚血再還流モデルから摘出した脳組織に上記染色を行い、コントロール脳と比べて細胞内の鉄の量がより多く検出された。その後、虚血再灌流障害モデルに対してDeferoxamin(DFO)群とコントロール治療群に分けてDFOが鉄の脳組織への蓄積を抑制することが確認された。またラットのDFO群とコントロール群での短期での神経症状の変化はなかったため、長期的な神経症状の評価(3か月)を行なったがやはり有意差は認められなかった。 これまでの研究結果として、脳虚血再還流モデルの安定した作成を達成した。脳虚血再灌流モデル動物を2群に分類して、コントロール群とDFO投与群での比較検討を行った。脳梗塞体積、脳浮腫、血液脳関門の破綻の評価を行った。また、得られた脳組織に免疫染色(CD34染色、 Apoptaq)及びWestern blot (Caspase-3, Bcl-x/Bcl-2,AQP4,GPX-4, HIF-α)を主に行った。さらにMDAアッセイおよびSODアッセイを行った。脳虚血再還流から3日後と7日後で、脳梗塞体積に2群間に明らかな有意差を認めることはできなかった。脳浮腫体積、血液脳関門の破綻に関しても明らかな有意差は認めなかった。 また、2群間でCaspase-3の発現、GPX-4の発現に有意なく、その他の染色も同様であった。MDAアッセイおよびSODアッセイではDFO群で濃度が上昇している傾向にあるものの有意差は認めなかった。2群において電子顕微鏡による観察を行ったところミトコンドリアの縮小が両者で認められた。以上の結果からDFO単独では鉄代謝に影響は及ぼすものの神経保護作用は明確ではなく、フェロプトーシスと虚血再灌流障害の関連に関してはさらなる別のApproachでの解析が必要と考えられた。
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