研究実績の概要 |
非致死的虚血 (ischemic preconditioning: IPC) により惹起される虚血耐性は強力な脳保護効果を発揮する。近年、耐性獲得にはアストロサイトの活性化に伴う耐性誘導機構が重要な役割を担うことが明らかとなったが、本現象におけるミクログリアの役割は解明されていない。今回、colony stimulating factor-1受容体拮抗薬(PLX)によるミクログリアの一過性除去がアストロサイトの活性化と耐性獲得に及ぼす効果を解析し、本現象でのミクログリアの役割を検討している。 マウス一過性中大脳動脈閉塞モデルを用い、15分虚血をIPC、50分虚血を致死的脳虚血とした。虚血耐性モデルではIPC7日後に致死的虚血を負荷した。PLXは、IPC前7日間、餌に混入し投与し、その後通常餌に切り替えた。梗塞体積は致死的虚血24時間後にTTC染色で計測し、致死的虚血群、虚血耐性群、虚血耐性+PLX群で比較した。 PLXによりIPC前にはミクログリアは消去されたが、致死的虚血前には非投与と同程度に復した。虚血耐性群では致死的虚血群に比較し梗塞体積が有意に縮小したが(P<0.05, n=10, 致死的虚血 86.5mm3、虚血耐性37.9mm3)、この保護効果はPLX投与により消失した(P<0.05, n=7, 63.5mm3)。
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