研究課題
現在多くの施設で視機能障害を回避するための術中視覚誘発電位(visual evoked potential: VEP)モニタリングが行われており、幾つかの工夫がされているが、視力低下例などでは未開といわざるをえない状況である。VEPは、大脳誘発電位であるため振幅が小さいことやノイズの問題から鋭敏な方法になっていないのが現状である。また、4分の1盲などは検出困難であり術前視力低下がある症例ではモニタリング自体が不可能なことも多い。現在の方法より中枢側での刺激や記録が可能であれば、VEPモニタリングに画期的な革新をもたらす可能性がある。本研究では、視覚野でなく頭蓋内視神経・視交叉・視索自体からの電位記録測定、ならびに網膜刺激に代わる神経自体の電気刺激により視覚野振幅増加をもって鋭敏で有効な術中評価モニタリング法を確立させることを目的として研究中である。本年度は、通常の光刺激方法で頭蓋内視神経・視交叉・視索から電位が測定可能を検証した。現在臨床ですでに応用されている蝸牛神経活動電位(cochlear nerve action potential: CNAP)の方法を視神経でも応用可能かどうか研究を行った。CNAPは蝸牛神経の神経機能である聴力を温存するために行うモニタリングで聴性脳幹反応より鋭敏で迅速である。この方法が、視神経に応用できれば、視機能温存に貢献可能となる。まず、研究内容を倫理委員会に申請し承認を得た。開頭術において視神経・視交叉・視索が観察できる症例において記録電極を設置し、神経自体より電位測定を試みた。視神経活動電位が記録可能であり現在、研究を継続中である。
2: おおむね順調に進展している
視神経より電位測定が可能であったが、症例毎に一定しておらず検討を要する状況である。また、過去の文献より安全な刺激強度を確認した。
今後は症例数を増やし、活動電位解析を行う。測定部位を視交差や視索でも行い部位による電位差があるか確認する。また、神経自体への電気刺激を行いより有効なモニタリングシステムを開発する。
学会参加がリモート参加が多く旅費などの計上が少なかった。研究結果を積極的に発信していく。
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Oper Neurosurg (Hagerstown)
巻: 21 ページ: 516 522
10.1093/ons/opab329