研究課題/領域番号 |
21K09168
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
貴田 浩志 福岡大学, 医学部, 講師 (80529454)
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研究分担者 |
立花 克郎 福岡大学, 医学部, 教授 (40271605)
安部 洋 福岡大学, 医学部, 准教授 (90368986)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル / 遺伝子導入 / mRNA |
研究実績の概要 |
初年度は遺伝子導入に用いるウルトラファインバブルの超音波条件検討を中心に研究を行った。アルブミンベースのウルトラファインバブルと分泌型ルシフェラーゼ遺伝子のpDNAやmRNAを溶液中に混合し、音響透過性フィルム底の96ウェルプレートに培養された腫瘍細胞株に対し、底部からの超音波照射による遺伝子導入実験を行った。その結果、キャリアフリーでpDNAのみならずmRNAの導入も可能であった。pDNAと比較して、mRNAは低強度、短時間の超音波照射で導入可能であることも明らかになった。ソノポレーション後の細胞生存率はウルトラファインバブルの有無に関係なく、超音波の照射時間に依存することが分かった。ウルトラファインバブルの1MHzの超音波照射によってキャビテーションを生じるのは200nm以上のウルトラファインバブルであること、遠心分離によって200nm以上のウルトラファインバブルは喪失されやすいこと、さらには200nm以上のウルトラファインバブルをあらかじめ除去すると、1MHzの超音波を用いた遺伝子導入能は著しく低下することが明らかになった。1MHzの超音波に共鳴できるのは200nm以上のウルトラファインバブルであり、EPR効果の期待できる、より微小なウルトラファインバブルの共鳴のためには超音波周波数をより高めるなどの最適化が必要である。ウルトラファインバブルをshRNAプラスミド、EGFR抗体で修飾するためのペプチド殻の組成に関する検討を行った。一方で予想外にバブル化せず、プラスミドと抗体、ペプチドの3者を混合するだけでも細胞株へのルシフェラーゼpDNA遺伝子導入が可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は予定していた、EGFRvⅢ変異膠芽腫細胞株とEGFR阻害抗体医薬を用いた抗腫瘍効果、EGFRvⅢリン酸化の評価、下流経路の遺伝子発現解析などは行えなかった。一方で使用するウルトラファインバブルの条件検討に関する実験を優先して行った。その結果、ウルトラファインバブルの超音波応答に関する物理的性質が明らかになり、さらにはウルトラファインバブルを用いない新規の遺伝子導入の発見にも至ったことから、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は初年度に実施できなかった、EGFRvⅢ変異膠芽腫細胞株とEGFR阻害抗体医薬を用いた抗腫瘍効果、EGFRvⅢリン酸化の評価、下流経路の遺伝子発現解析などを実施する。そのうえで、初年度の結果から示唆される、ウルトラファインバブルを共鳴させる超音波条件での抗腫瘍効果の確認実験を進める。またウルトラファインバブルを用いない新規条件でも治療実験を行い、抗腫瘍効果を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に実施予定であったEGFRvⅢ変異膠芽腫細胞株とEGFR阻害抗体医薬を用いた、MTT試験、EGFRリン酸化抗体アレイ解析、RNAシーケンスなどの実験を行わなかったため次年度使用額が生じた。これらの実験は次年度に実施予定であり、その際の支出として使用予定である。
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