研究課題/領域番号 |
21K09172
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山内 貴寛 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (50598670)
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研究分担者 |
山田 雅巳 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (10322851)
藤田 聡 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (60504652)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インポーティンα1 / 遊走能 / 膠芽腫 |
研究実績の概要 |
2022年度はインポーティンα1遺伝子のノックアウト細胞において、遊走関連因子の発現についての探索を継続するとともに、Wound Healing Assay (WHA)やナノファイバーを用いた遊走実験による観察を行った。また、マウスを用いたin vivo実験のためのノックアウト細胞の増殖および安定したノックアウト遺伝子/タンパクの維持を行った。 U87およびU251株を用いた実験で、悪性度の高い細胞で発現や細胞質内の局在に変化がみられるとされるインテグリンβ1は、インポーティンα1遺伝子のノックアウト細胞において細胞突起への細胞内輸送が制限されていた。WHAによる細胞遊走観察の結果から、現在報告されている悪性度や遊走に関連した因子の中で、細胞骨格や接着因子が関係していることが予測された、接着因子であるCADM1は、ノックアウト細胞でWestern Blotting法によるタンパク量が増加が確認された。免疫染色においても特に細胞体において強いCADM1の発現がみられ、同様の結果であった。WHAにおいては、腫瘍は単独での遊走の割合が減少し、突起を伸ばすも前方に遊走できないといった状態の観察がなされた。このようにWHAでは細胞接着能の亢進や遊走に制限がみられたが、ナノファイバーを用いたシングルセルの観察では遊走の明らかな制限は観察されなかった。 本年後のin vivo実験の準備として、ノックアウト細胞は凍結保存後の継代においても遊走やWestern Blotting法でのタンパク量の変化において、変異した機能を維持していたことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度に確立されたインポーティンα1ノックアウト法を用いて、細胞遊走におけるインポーティンα1の役割としてCADM1という新たな因子を発見しえた。初年度のインテグリンβ1とあわせて代表的な高悪性度細胞に関係した因子であり、インポーティンα1の細胞遊走能亢進の解明に進歩がみられた。 また、マウスによるin vivo実験を計画しており、ノックアウト細胞の増殖後の遺伝子変異に維持も確認された。これにより2023年度予定していた実験が可能となった。 一方で、2022年度後半に予定していたマウスへのin vivo導入実験は、研究計画の変更により、2023年度の5月から実施する計画となり、若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はインポーティンα1のノックアウト細胞を用いたin vivo実験を行う予定である。インポーティンα1のノックアウトによりマウス脳内での腫瘍細胞の浸潤やマウスの生存期間にどのような差が生じるかを評価する。また、膠芽腫の標準治療を行い、治療効果に対する差も併せて評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に計画していた実験のなかで、マウスを用いたin vivo実験が予定されなかった。そのための費用が当該年度に使用されなかった。次年度に当該年度に行う予定であったマウスを用いたin vivo実験を行うため、マウスの購入費用、管理費、消耗品の使用にあてる計画である。
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