研究課題/領域番号 |
21K09175
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
礒田 治夫 名古屋大学, 脳とこころの研究センター(保健), 教授 (40223060)
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研究分担者 |
平野 祥之 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00423129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工知能 / 深層学習 / ノイズ軽減 / 脳動脈瘤 / 4D Flow MRI / 磁気共鳴流体解析 / 計算流体解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、深層学習を用いた人工知能(AI)を用いて磁気共鳴流体解析 (Magnetic Resonance Fluid Dynamics, MRFD)のノイズを低減し、計算流体解析 (Computational Fluid Dynamics, CFD)に匹敵する精度を持つ結果に変換することである。本研究は本学の生命倫理審査委員会の承認を得た。4D Flow MRIが撮像され、CFDが実施された脳動脈瘤を持つ患者28名を対象とした。23例で学習データを構築し、CFDで得られた3次元速度ベクトルデータを正解データとした。まず、MRFDを模倣したノイズをk空間上に加えるため、正解データのCFDの3次元ベクトルデータから位相画像と強度画像を作成し、高速フーリエ変換を用いてk空間上に変換した。そして、k空間上でMRFDを模倣する適切なガウス分布ノイズを加え、逆フーリエ変換を用いて3次元ベクトルデータに戻し、これを入力データとした。反転を用いてデータの増強を行い、教師データセットとして合計9972個のデータを作成した。深層学習モデルの構造は、ノイズ除去モデルであるWin5-RBの構造を使用した。深層学習モデルに教師データを学習させた後、学習に用いていない患者5名のMRFD・CFDデータを用い、予測精度を検討するために定性評価および定量評価を行った。定量評価の評価指標はCFDを基準とし、血流速度ベクトルの角度類似指数 (Angle Similarity Index, ASI)・血流速度ベクトルの強度類似指数 (Magnitude Similarity Index, MSI)とした。MRFDを入力データとした深層学習モデルの予測データのベクトル図では速度ベクトルのノイズ減少が見られ、流線図では瘤内の流線のつながりが良好であった。また、予測データのASI・MSIの精度が向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記載したように、AIを用いてMRFDのノイズ軽減ができるようになったが、まだ、壁剪断応力 (wall shear stress, WSS) の精度向上には至っていない点や、高空間分解能化が達成できていない点で予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ノイズを含む学習データの作成方法に更に工夫を加え、ノイズの更なる軽減と精度向上をねらう。このため、MRFDのノイズに近いノイズが学習データに含まれるように試行錯誤する予定である。さらに今までに試していない既存の深層学習モデルの導入や新たな深層学習モデルの構築を試み、ノイズの更なる軽減と精度向上を目指す。 また、AIによる磁気共鳴流体解析の高空間分解能化も推し進める。先行しているノイズ軽減の研究と合わせることにより、WSSの精度向上を狙う。 磁気共鳴流体解析の元画像である 4D Flow MR画像を入力すれば、脳動脈瘤のWSSが求まるようなAI開発も取り組んで行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、海外で開催された学会に参加しなかったこと、並びに当初予定していた本学スーパーコンピューターの使用料金が安価であったことなどが主な理由で次年度使用額が生じた。 次年度では、海外で開催される国際学会での演題発表を予定しており、この旅費のために「次年度使用額」を使用する予定である。当初は研究責任者、研究分担者の2名のみの予定であったが、研究協力者である本学大学院医学研究科大学院生も参加の予定である。
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