今後の研究の推進方策 |
我々が注目したのは、グルコース輸送体(GLUT)である。正常組織と比較して悪性神経膠腫ではGLUT1, GLUT3の発現が高く、更に予後不良因子であることが報告されており、GLUT標的とした治療が重要であることは自明である。GLUTはアミノ酸輸送体と並び現在研究開発が最も進んでいる癌標的輸送体である。共同研究にて糖結合ホウ素薬剤の開発をスタートし、糖としてグルコースとグルコサミンを選択した。これらの糖へ様々な抗がん剤(paclitaxel, adriamycin)を結合させ、GLUTを標的とした薬剤の報告があり、既に、薬剤合成並びに評価法が確立されている。グルコースとグルコサミンに対して、これまでのBNCT臨床研究で使用実績のあるホウ素薬剤BSHを結合させたグルコース-BSHとグルコサミン-BSHを作成した。1.合成手法の確立、NMR,MSによる物性評価(物質特許取得へ):研究協力者と薬剤合成の確認とMS,NMR 等による純度,異性体等の物性の評価し、本薬剤の合成手法の確認と大量合成へ向けての取り組みを行っていく。2.腫瘍細胞・正常細胞での薬剤取り込みの毒性評価,:ヒト悪性神経膠腫U87MG, T98G, U251MG、マウス正常グリアを使用、細胞内ホウ素濃度測定をICP-MS(誘導結合プラズマ診療分析法)にて行う。同時に、GLUT高発現の代表的な悪性腫瘍である膵癌細胞にも注目し、膵がん細胞での取り込み能についても同時に確認する。3. 薬剤の細胞内分布評価と取り込み機序の確認(GLUT経路):悪性脳腫瘍細胞、膵がん細胞株を用いて、取り込みと同時にGLUT阻害薬投与による阻害効果の検討を行う。GLUT阻害薬としてWZB117(C20H13FO6、分子量368.31)を使用し、細胞障害性の無い濃度での取り込み阻害効果をICPを用いて細胞内ホウ素濃度の定量評価にて検証する。
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