神経膠腫は原発性脳腫瘍の約25%を占め、手術による完全切除が不可能である。膠芽腫の標準治療であるテモゾロマイド(TMZ)を投与しても、平均生存期間は14か月であり、早急な追加療法の開発が望まれている。 自然界に多量に存在する単糖は、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)などが知られており、通常は細胞構成成分やエネルギーとなる。これに対し、自然界に微量しか存在しない単糖を希少糖と総称しており、キシリトールなどが日本では認知されている。希少糖は現在50種類以上が確認されているものの、自然界においてほとんど存在しないことから、単糖のバイオロジーは、グルコース以外研究されていない、未知の領域であり、希少糖の生物学的機能や存在意義については、ほとんどわかっていない。その理由として、これまで研究に耐えうる量の人工合成が不可能であり、非常に高価であったことにある。香川大学では、1991年に果糖を希少糖に変換させる酵素の発見をきっかけに、その後の研究により、これまで大量生産が困難であったアルロース、アロースといった希少糖を当大学で量産化に成功した。いまでは香川大学国際希少糖研究教育機構により、世界でも希少糖に関する研究をリードしている。これまでに当大学からの報告では、頭頚部癌、肺癌、肝癌、膵癌、大腸癌、泌尿器癌、皮膚癌、卵巣癌、などの他癌腫において、希少糖の中のD-alloseに関する抗腫瘍効果が多数報告されている。このように、希少糖に関する研究の経験はあるものの、これまで脳腫瘍との関係は研究してこなかった。 そこで本研究計画では、D-alloseあるいはその他の希少糖に、膠芽腫に対する抗腫瘍効果があるのか?あるならば、そのメカニズムを解明し、臨床応用できるのか?について研究し、膠芽腫に対する新規治療法の開発を目指す。
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