研究課題/領域番号 |
21K09180
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
出雲 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (40343347)
|
研究分担者 |
諸藤 陽一 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 脳神経外科, 医長 (40437869)
松永 裕希 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (80772136)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | blood brain barrier / drug repositioning / fasudil hydorochloride |
研究実績の概要 |
本研究では血液脳関門(BBB)の基本構成単位である脳毛細血管内皮細胞、ペリサイト、及びアストロサイトといった、全ての細胞を組み合わせた複数の共培養in vitro BBBモデルを用いて、病態モデル(虚血、炎症、がん脳転移)を作製、また、灌流型の3次元BBBモデルを開発し、neurovascular unitにおける細胞間相互作用を検討することを第一の目標とした。さらに現在臨床の現場で使用されている薬剤がBBBに与える影響及びその作用機序の解明を行った。このメカニズムを解明することにより中枢神経疾患治療薬の開発、ひいては全く新しい創薬概念である「BBB保護薬」の開発を目的として研究を行ってきた。 令和4年度においては、まずは灌流型3次元血液脳関門モデルの作成に取り掛かり、長崎大学薬理学教室、ハンガリー科学院および米国ワシントン大学との共同研究を進めた。その成果は国際シンポジウムにて報告を行い、高い評価を得た。また、同時に進めていた2次元in vitro血液脳関門モデルの作成を行った。多孔質の半透膜をもつ立体培養皿を用い共培養モデルを作製した。液性因子のみの影響を受けるモデルと、内皮細胞とペリサイトまたはアストロサイトが接触できるモデルを作製し、更に3種類の細胞を同時に共培養したモデルも含め7種類のモデルを作製した。これらのモデルを用いて、塩酸ファスジルのBBB保護作用について明らかとして、この成果についても論文発表してきた。これらの成果については、すでに高い評価を受けることに成功している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元in vitro血液脳関門モデルを用いた研究は、上述のごとく脳転移モデルを中心に順調に進行中である。また、灌流型3次元in vitro血液脳関門モデルについても、国際共同研究を含めてほぼ順調に進行している。薬剤およびがん細胞が血液脳関門機能に与える影響については、すでに多くの実績を積み上げている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はさらに既知薬剤がBBB機能に与える影響の評価のための、さまざまな病態モデルの作成と、そこから得られる細胞を回収しての免疫生化学的検討、および血管腔側および脳側の培養液を用いたサイトカインアッセイを行う予定である。また、2次元および3次元モデルの比較検討と分子生物学的機序の解明を目的として、病態モデルにおけるBBB機能をa)EVOM抵抗計(Volt-Ohm resistance meter)を用いた経内皮電気抵抗(transendothelial electrical resistance, TEER)、b)sodium fluorescein 法(小分子(376Da) paracellular transport)、Evans'blue-albumin 法(大分子(67kDa transendothelial transport)c)P-糖タンパクの機能検定(rhodamine123法による)、d)Immunoblot 法にてタイトジャンクションタンパク(claudin-5, occludin, ZO-1)、とトランスポーター(P-gp,MRP, BCRP, GLUT1)の発現を確認することで、詳細に検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
血液脳関門2次元モデルおよび3次元モデルにおいて、薬剤の影響について各種アッセイを行う予定であったが、コロナ禍の影響もあり、モデル材料の確保に遅れが生じたために、未使用額が発生した。未使用額については、今後3次元環流型モデルの作成費用とサイトカインアッセイに使用予定である。
|