研究課題/領域番号 |
21K09190
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
矢木 亮吉 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (00632283)
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研究分担者 |
鰐渕 昌彦 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (30343388)
野々口 直助 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70388263)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 悪性髄膜腫 / 浸潤能 / ACTC1 |
研究実績の概要 |
悪性髄膜腫(WHO grade II/III)は放射線治療に対する感受性が低く、奏効する薬物療法が存在しない髄外間葉系悪性腫瘍である。さらに、悪性髄膜腫は良性髄膜腫(WHO grade I)と比較し、摘出術後の再発率が有意に高く、強い浸潤能を示すが、その浸潤機構の詳細は未だ解明されていない。Actin Alpha Cardiac Muscle 1(ACTC1)は鰐渕らが、悪性神経膠腫の細胞浸潤能に関与することを報告した分子であり、正常細胞では胎性幹細胞(ES 細胞)や間葉系幹細胞において高発現が見られる遺伝子である。そこで、間葉系腫瘍である悪性髄膜腫の浸潤能にACTC1が与える影響を明らかにし、ACTC1と共発現変動する遺伝子を解析することで悪性髄膜腫の細胞浸潤における分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。①細胞浸潤メカニズムにおけるACTC1の役割、②そのメカニズムの上流に位置するkey regulatorの同定、を行うべく実験計画を進めた。実験に用いる細胞株を樹立させるため、髄膜腫細胞株の浸潤能に関与していると考える“ACTC1“の遺伝子発現を、2種類の悪性髄膜腫細胞株(IOMM-LEE株、HKB株)においてoverexpression, knock outし、さらにcontrol株も作成した。この合計6種類の細胞株を準備し、それぞれの細胞株の”ACTC1”発現量をPCRおよびWestern blotting法により定量し、それぞれの発現の亢進、抑制を確認している。またそれぞれの細胞株の遊走能および浸潤能の違いは、Gap closure assayならびにBoyden chamber assayにより検証し、現在解析を行っている最中である。また同時に、低酸素環境下(1% O2)における細胞株それぞれの遊走能および浸潤能をGap closure assay, Boyden chamber assayにより検討し、こちらも解析している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると判断するが、2種類の悪性髄膜腫細胞株(IOMM-LEE株、HKB株)におけるoverexpression,およびknock outを行うのに想定以上の時間を要した。そのため、現在、細胞株を用いた郵送、浸潤能の検討までは進めたが、解析途中である。時間を要した要因としては細胞株が不安定であり、また手技的な要因も考えられる。新たな細胞株を購入し実験を進めることにより、予定した6種類の細胞株作成は手技も含めて安定しているため、今後の実験への影響はないと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、2種類の悪性髄膜腫細胞株(IOMM-LEE株、HKB株)それぞれにおいてACTC1発現をoverexpression, knock out、controlした6株に加え、ACTC1を高発現し、かつ低酸素刺激により遊走能が亢進することが判明している正常細胞「ヒトES細胞由来間葉系前駆細胞」(以下hESMP)を対象として、低酸素負荷による遺伝子発現データを解析する。それぞれの低酸素負荷を0, 2, 6,12, 24時間として35種類の細胞株によるデータ解析を行うことで、ACTC1の発現を上流で制御する遺伝子群(miRNA/lncRNAを含む)と、それに関与する転写因子を抽出した分子ネットワークモデルを作成する。この解析により、標的遺伝子群を解析することが非常に重要であり、時間を要する。この解析に関しては、研究分担者である野々口直助とともに、他の研究で共同研究を行っているリヨン大学生化学教室のProfile expert部門のバイオインフォマティシャンらとも検討会を行う予定としている。 令和5年度には標的遺伝子に対する阻害薬を用いた阻害実験を行い、遺伝子発現がどのように変動するかを検証する。これによりhMMの細胞浸潤メカニズムの本質に迫りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
PCRやWestern blot消耗品や試薬を使用したが、予定数よりも少ない回数で使用している。次年度でも引き続き施行する予定であるが、次年度の予算では計上していない費用である。そのため、研究費を繰り越し、次年度に使用することとした。さらにデータ解析ソフトやデータ管理のためのラップトップについても次年度に購入する予定である。
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