研究課題/領域番号 |
21K09194
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
斉野 織恵 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (90895111)
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研究分担者 |
小川 優子 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (00454497)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性期脳梗塞 / 造血幹細胞治療 / 動脈内投与 / ヒト末梢血CD34陽性細胞 / 代謝関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
脳梗塞が完成して慢性期に移行すると、損傷した神経系が完全に失われることから、機能回復は不可能と考えられてきた。そのため、脳梗塞治療の大半が急性期または亜急性期をターゲットにしており、慢性期脳梗塞(脳梗塞の後遺症)に対する標準治療法は存在しない。我々は、造血幹細胞移植は、慢性期の脳梗塞に対しても適切な運動療法を組み合わせることで神経機能を有意に回復させることを明らかにした。そこで本研究では、慢性期脳梗塞に対する造血幹細胞の治療効果に関して詳細な検証を行った。 実施内容①:最適な投与経路に関する検証 脳梗塞治療における造血幹細胞の作用部位は、脳の血管内皮細胞である。より多くの細胞が脳に到達する必要があることから、亜急性期の脳梗塞モデルマウス(梗塞作製48時間後)にヒト末梢血CD34陽性細胞を用い、静脈内投与と頸動脈内投与を行った際の治療効果を比較した。その結果、静脈内投与に比し、頸動脈内投与では同じ細胞数でも治療効果の持続時間が長いことが明らかとなった。 実施内容②:細胞投与後の脳内代謝関連遺伝子に関する検証 造血幹細胞を投与した後の脳の代謝関連遺伝子についてqPCRを用いた検証を行った。先行研究の結果から、造血幹細胞投与後の脳の代謝変化は造血幹細胞移植後3時間において最も顕著に変動することが判明している。そこで、投与3時間後および神経機能改善後(細胞治療10週後)の代謝を比較した。その結果、①投与後の脳の代謝変化が障害側だけではなく、反対側においても顕著に生じていること、②左右で治療効果の影響を受ける時期が異なることを明らかにした。 一方、我々が実施した非臨床POCを元に、自己末梢血CD34陽性細胞の内頚動脈投与による医師主導治験を2021年7月1日より、神戸市立医療センター中央市民病院で開始した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、最適な投与経路に関する検証、細胞投与後の脳内代謝関連遺伝子に関する検証を行い、さらにこのデータに関して学会や論文にて発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で、慢性期脳梗塞治療においては、①投与後の脳の代謝変化が障害側だけではなく、反対側においても顕著に生じていること、②左右で治療効果の影響を受ける時期が異なることを明らかにした。 この知見を踏まえ、今年度は以下のことを行う計画である。まず初めに、投与細胞が投与直後に障害側・反対側のどの部位に到達しているのかを検証する目的で、蛍光剤を封入した幹細胞を移植して細胞のトレーシングを行う。さらに、治療後にみられる神経機能改善に関し、神経新生や神経回路再構築が生じる時期・部位を検証する目的で、免疫組織学手法を用いた神経組織の解析、qPCRを用いた神経伝達物質関連遺伝子の発現測定を行う。
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