研究課題
【目的】これまでに我々は、難治性肉腫における樹状細胞を用いた免疫療法の安全性,免疫学的反応,腫瘍学的治療効果を臨床試験として行ってきた.本研究では、これらの患者の腫瘍組織における腫瘍免疫状態と,樹状細胞療法の治療効果の相関について後ろ向きに調査した.【方法】対象は再発性または転移性病変を有する骨軟部肉腫患者37例で,平均年齢37.8歳,平均経過観察期間28.7ヶ月である.臨床試験では、患者の末梢血単核細胞をIL-4,GM-CSFを用いて未熟樹状細胞へ分化誘導し,さらに腫瘍破砕物質(tumor lysate),TNF-α,OK-432によって成熟させ,得られた樹状細胞を鼠径または腋窩に皮内注射するという治療を毎週,合計6回行った.免疫学的効果として治療前後の血清IFN-γ,IL-12を測定した.また,腫瘍細胞におけるPD-L1,PD-L2,HLA class Iの発現を評価し,これらの発現と免疫療法後の免疫反応(IFN-γ,IL-12),治療効果,生存期間の相関を評価した.【結果】腫瘍免疫状態と治療効果の調査において,PD-L1発現の有無による病勢コントロール率(CR+PR+SD)は,PD-L1 (+)群 0%,PD-L1 (-)群 22%であり,PD-L1 (+)例で病勢コントロール率が低かった.また,PD-L2発現の有無による病勢コントロール率(CR+PR+SD)においても,PD-L2 (+)群で13%,PD-L2 (-)群で22%と,PD-L2発現例で病勢コントロール率が低かった.さらに,PD-L1 (+)群はPD-L1 (-)群に比べて全生存率が有意に低かった.一方,HLA class Iの発現と免疫療法後の免疫反応,治療効果に相関は認めなかった.【結語】PD-L1,PD-L2発現例では樹状細胞療法の治療効果が少なく,これらが治療阻害因子である可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
予定通り研究計画を遂行できている。
研究計画の通りに研究を遂行する
参加予定であった学会がWeb開催となり、旅費が予定よりも少なくなった。今年の学会で使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (25件) (うち査読あり 24件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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