研究課題/領域番号 |
21K09203
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福井 友章 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50437688)
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研究分担者 |
大江 啓介 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (20514623)
新倉 隆宏 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (40448171)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 炭酸ガス / ラット |
研究実績の概要 |
加齢に伴い骨粗鬆症と骨脆弱性骨折のリスクは増大する。これは閉経後の女性で顕著であり、現在骨粗鬆症に対しては薬物治療が一般的である。我々はこれまでに炭酸ガス経皮吸収が、局所組織内の酸素化、血流増加、血管新生を介し、骨折治癒の促進や破骨細胞活性の抑制効果を有する事を報告してきた。本研究の目的の一つは、卵巣摘出(OVX)ラット骨粗鬆症モデルを用いて、炭酸ガス経皮吸収システムにより骨粗鬆症の病態が改善するかを検討する事である。 12週齢の雌ラットを用い、両側OVXを施行し骨粗鬆症モデルを作成した。これらを炭酸ガス経皮吸収群、対照群の二群に分け、炭酸ガス群に対してはOVX術後翌日より炭酸ガス投与を開始する実験系(骨粗鬆症の予防を検討)と、OVX術後8週経過してから炭酸ガス投与を開始する実験系(骨粗鬆症の治療を検討)の二通りの実験系を組んだ。炭酸ガス経皮吸収は1日20分間、週5日行った。対照群に対しては同様のゲルを塗布しポリエチレン袋にて密閉するのみとした。両群において、炭酸ガス経皮吸収開始後8週マイクロCTを用いて大腿骨遠位部の骨量などのパラメータを比較した。現在、各実験系の各群において5サンプルずつの介入が終了し評価を行ったが両群間に有意差は認めていない。 また、今後の研究に密接に関わってくると考えられることから、炭酸ガス経皮吸収の至適治療時間についての検討も行っている。ラット大腿骨骨折モデルを作成し、従来の20分投与に加え、60分投与の群を設定した。頻度は上記と同じく週5日としている。骨折作成後4週までの毎週のレントゲン撮影を終了しており、順次データ解析予定である。また、同様のタイムポイントでの組織評価用のサンプル採取を完了しており、切片作製予定である。さらに、術後2・3週での骨遺伝子学的検討と免疫組織学的検討を行うためのサンプル採取と、術後4週での骨密度評価を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、当初の研究計画と比較しやや遅れて進行している。その理由として①OVXモデルの確立②炭酸ガス経皮吸収手技の獲得③実験条件の再設定の3点が挙げられる。 研究開始当初、OVXのモデル作成を当研究室内で行ったものはおらず、専門家の指導の下でOVXの手技を獲得した。我々の手技によって骨粗鬆症モデルが作成できているかについて、マイクロCTを用い骨量が低下していることを確認した。また炭酸ガス経皮吸収手技についても習熟が必要であり、ポリエチレン袋を腹部あたりで強く締めすぎることでラットが窒息死してしまった事例があり、適切な手技獲得に時間を要した。また各実験系において、主評価項目である骨形態学的パラメータでは両群間に有意な差を認めない結果であったため、マイクロCTによる計測部位の再設定やサンプルサイズの見直しなどを含めて、実験の条件の調整を行っている段階である。 以上の3点が実験遅延の考えられる原因だが、①OVXモデルの確立②炭酸ガス経皮吸収手技の獲得の2点については解決しており、現在、③実験条件の再設定に尽力中である。 並行して行っている炭酸ガス至適投与時間の検討については、大きな支障なく進行している。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、実験条件の再設定を行い、主評価項目である骨形態学的評価を中心に評価を行っていく予定である。骨形態学的評価に有意差を認めれば、組織学的評価、骨強度評価、遺伝子学的評価を順次進めていくと同時に、タイムポイントを増やし経時的な変化についての観察も検討している。 上記は女性骨粗鬆症モデルについてであったが、同時並行で男性骨粗鬆症モデルについても研究をすすめていく予定である。差し当たっては専門家指導の下、精巣摘出術(ORX)の手技獲得とモデル確立について行う方針としている。 また、並行して行っている炭酸ガス至適治療時間についての研究結果から20分でない別の投与時間で優れた結果が得られるようなら、OVXモデルに対する投与時間の変更も検討したい。 いずれについても研究結果が出そろい次第、国内学会および国際学会にてその成果を発表するとともに、英文論文として投稿する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りに予算を使用していたが、2022年2月に情報収集のために予定していた学会参加を新型コロナウイルス対策の関係で中止したことが一因となり、次年度使用額が生じた。次年度の研究計画を予定より早く進めるために必要物品の購入等に充てる予定としている。
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