現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
靭帯に異所性骨化をきたすOPLLは、未だ原因も骨化の進行を抑制する治療法も存在しておらず、手術等で神経症状をきたす骨化巣を取り除いても、そもそもの骨形成要因の改善はないことから再狭窄等生じる可能性がある。OPLLは同胞発生など、遺伝的な要因によって発症することが知られていることから、GWASは疾患発症機構を解明する上で、最も有効な手法の1つと考えられる。疾患感受性遺伝子座として同定された20p12.3は独立した2つのGWASで確認されており、HAO1はその遺伝子座に存在する唯一のopen reading frameを有する遺伝子であることから、疾患関連遺伝子候補と考えられた。同様に、GWASでは他に5つの疾患感受性のある遺伝子座を同定しており、当該SNPが存在する遺伝子座に位置し、かつopen reading frameを有する7つの遺伝子(RSPO2, EIF3E, CCDC91, EIF3H, CDC5L, RSPH9, TMEM151B)を疾患関連遺伝子候補として同定した。そこで本研究では、in vitroにおける骨芽細胞の分化培養系において、これらの疾患関連遺伝子候補の発現解析を行い、骨芽細胞の分化進行に伴い、HAO1の発現が有意に低下することを見出した一方で、他の疾患関連遺伝子候補の発現には有意な変動を認めなかった。そこで、本研究ではHAO1に着目し、またHAO1の発現低下に伴い骨芽細胞の分化が促進することから、HAO1の発現低下が靭帯骨化に有利な環境を形成すると考え、HAO1の遺伝子欠損マウスを作成し、HAO1のin vivoにおける異所性骨化抑制能を解析することとした。HAO1欠損マウスは予定通り作製に成功したが、アダルトにおけるHAO1の有意な遺伝子抑制によっても靭帯を含む異所性骨化は観察されなかった。一方で、HAO1が酵素タンパク質であり、生体においてTCA cycleを制御することを新たに明らかにした。これらの成果については、英文誌に論文報告を完了した(Metabolites 2022)。以上の成果から、研究が概ね順調に進行している、と判断した。
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