研究実績の概要 |
難病指定を受けている後縦靱帯骨化症(OPLL)は、脊椎椎体の後縁を連結する後縦靱帯が骨化することにより、 脊柱管狭窄を来す疾患である。 様々な要因が考えられているが、異所性骨化の要因は依然不明のままである。申請者は、genome-wide association study (GWAS)により同定されたOPLL発症と相関する遺伝子座に存在する疾患関連候補遺伝子Hydroxyacid oxidase 1 (HAO1)に着目し、まずHAO1の発現がin vitroの骨芽細胞分化の過程で発現が有意に低下することを見出した。GWASでは他に5つの疾患感受性のある遺伝子座を同定しており、当該SNPが存在する遺伝子座に位置し、かつopen reading frameを有する7つの遺伝子(RSPO2, EIF3E, CCDC91, EIF3H, CDC5L, RSPH9, TMEM151B)を疾患関連遺伝子候補として同定したが、これらの遺伝子発現には有意な変動を認めなかった。そこで、HAO1遺伝子欠損マウスを作出し、靭帯に異所性骨化が生じるか、in vivoで検証を行うこととした。HAO1遺伝子のexon2をloxPシークエンスで挟むコンストラクを設計し、予定通りのマウスの作出に成功した。そこで、アダルトにおいて全身的にHAO1遺伝子を欠損させるためMx1 Creマウスと交配し、Hao1コンディショナルノックアウトマウス(HAO1 cKO: Mx1 Cre/Hao1 flox/floxマウス)を樹立し、その作出に成功した。HAO1 cKOでは残念ながらOPLLの発症は認めなかったが、 尿サンプルを用いたメタボローム解析によって、驚いたことにHAO1がtricarboxylic acid (TCA) cycleの制御に関わっていることを明らかにした。
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