研究課題/領域番号 |
21K09206
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
樋田 真理子 大分大学, 医学部, 客員研究員 (10737224)
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研究分担者 |
矢野 博之 大分大学, 全学研究推進機構, 教務職員 (50448552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コラーゲン / 転写 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
線維性コラーゲン分子における軟骨形成の役割について、発生の初期段階に発現し、コラーゲン線維の直径を制御するXI 型コラーゲン遺伝子、また、発現量は少ないものの軟骨に限局して発現し、厳密に発現が制御されているXXVII型コラーゲン遺伝子、2つのコラーゲン遺伝子に焦点をあて、その分子メカニズムを明らかにすることによって検証を行う。 そこで本研究では、XI型及びXXVII型コラーゲン遺伝子の軟骨細胞における発現調節機構について培養細胞やマウスを用いて解析を行うほか、RNAの新機能であるトランスクリプトームに着目し、long ncRNAやマイクロRNAによる転写及び翻訳調節機構についてもあわせて検討を試みる。 これまでに、遺伝子発現における基本転写調節機構であるプロモーターの解析については、XI型コラーゲン遺伝子では、軟骨細胞において転写因子NF-Yがプロモーター活性を制御しており、さらにNF-Y結合部位の下流領域に位置する転写因子Sp1が、NF-Yと協調してXI型コラーゲン遺伝子の発現を増強させることが明らかとなっている。また、XXVII型コラーゲン遺伝子については、2つの転写産物が存在しており、新たに見出された転写産物が、軟骨特異的に発現していることが明らかとなっている。特に、新たな転写産物を含むプロモーター領域の解析に重点をおいて、その基本プロモーター領域を絞り込むとともに関与する転写因子を明らかにしたい。さらに組織特異的なシスエレメントの解析を進めることによって、軟骨形成に関与する遺伝子発現調節機構について網羅的な解析ができるように進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軟骨細胞において、特にXXVII型コラーゲン遺伝子の基本プロモーター領域の解析に時間を要している。これまでに、長さの異なるルシフェラーゼコンストラクトを用いルシフェラーゼアッセイを行い、プロモーター領域の絞りこみを行ってきた。関与する転写因子を同定するために、さらに領域を絞り込む必要があるため、欠失や変異のコンストラクトを組み合わせることによってルシフェラーゼアッセイを行いプロモーター領域の検証を積み重ねてきた。しかしながら、プロモーター領域に関与する転写因子の候補を限定することに時間を要している。 加えて、データベースにより配列から予想される転写因子の候補やこれまでの研究結果(EMSA等)から想定される転写因子の候補からもプロモーター領域に関与する転写因子の特定を試みているが精査に時間を要している。以上のことより進捗状況は、やや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、軟骨細胞におけるXXVII型コラーゲン遺伝子の基本プロモーター領域の解析を進めるため、引き続き現存のルシフェラーゼコンストラクトを複数の細胞株を用いたルシフェラーゼアッセイによって比較検証する予定である。さらに、必要に応じて新たに組み合わせや条件の異なる追加のコンストラクトを作製し、ルシフェラーゼアッセイを行い領域の特定及び転写因子の同定を試みる予定である。また、基本プロモーターの解析とともに、軟骨特異的なシスエレメント領域についても解析を進め、遺伝子発現調節機構の解明を進めていきたい。 こうした遺伝子発現調節機構におけるプロモーターやシスエレメントの相互作用を踏まえて、軟骨の分化過程への影響やその分化誘導機能について未分化幹細胞を用いて解析を行えるよう準備を進め、また、トランスクリプトームによる影響についても考察し軟骨特異的発現調節機構の網羅的解析を目指していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
軟骨細胞におけるXI型及びXXVII型コラーゲン遺伝子の発現調節機構を解明するため、また、軟骨細胞の分化や機能維持の分化制御機構を解明するため引き続き解析を行う。 具体的には、トランスフェクションやルシフェラーゼアッセイといった細胞培養実験に関わる費用として、さらに、軟骨の分化過程に及ぼす影響について未分化幹細胞を用いての解析を予定しているためその予備実験等にかかる費用として次年度使用するため予算を繰り越すこととした。また、必要に応じて追加でコンストラクトを作製することが想定されるため、配列の確認のためDNAシーケンサー等の機器利用料として使用するため、その他に、プロモーターやシスエレメント領域に関与する転写因子を明らかにするため、データベースの解析費用として使用を予定しているため、次年度へと予算を繰り越すこととした。
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