研究課題/領域番号 |
21K09213
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辻 収彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (70424166)
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研究分担者 |
畑 純一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00568868)
依田 昌樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30464994)
藤吉 兼浩 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究部), 整形外科, 医長 (80365303)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MRI |
研究実績の概要 |
運動器組織の中でも骨格筋は高い再性能力を有する組織であるが、加齢や病的環境下ではその能力が低下し、筋変性(脂肪浸潤、線維化、萎縮)が生じることが知られている。また重度の損傷・長期間経過後の線維化や脂肪変性は手術加療抵抗性であることも知られている。こうした筋の変性は不可逆的な現象と考えら、骨格筋の機能を著しく低下させる。これらは加齢性変化による筋萎縮の進行した高齢者や、高い運動能力を要求されるアスリートにおいて重要な問題となる。例えば実臨床においては、脊椎術後の脊柱後方筋萎縮による難治性の軸性疼痛や、縫合不可能な陳旧性肩腱板損傷などの問題にしばしば直面する。これらの病態に共通している予後規定因子は、筋脂肪変性と線維化の度合いである。更には本邦での急速な高齢化社会の進展に伴い、サルコペニア・フレイルに関連する運動器疾患は慢性痛の原因となり、脂肪変性と線維化の予防並びに改善のためにはその分子メカニズムの解明は非常に重要であると考えられる。筋肉内には筋衛星細胞と異なる系譜の間葉系前駆細胞が間質に存在し、この間葉系前駆細胞はPDGFR (Platelet Derived Growth Factor Receptor)α陽性であり、筋肉の脂肪変性・線維化に関わっていることが既に報告されている。 申請者らはマウス肩関節腱板損傷・変性モデルを作成し肩関節の腱板構成筋の切離と脱神経、骨頭の切除を組み合わせることで、効率的に筋脂肪変性・線維化が生じることを高い再現性を持って確認した。本研究においてはPDGFRαプロモータ下に赤色蛍光蛋白tomato を発現する遺伝子改変マウスを用いて、腱板切離後にtomato 陽性細胞の脂肪変性・線維化との関連について解析した。令和3年度中に、より実臨床に近い腱板損傷症例の病態を反映した腱板のみを切離するマウス腱板損傷モデルを作成し、詳細な組織学的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度中に、若齢及び加齢マウスを用いて、骨頭抜去・脱神経を行わない、腱板切離のみのマウス腱板損傷モデルを安定して作成することに成功し、組織学的解析を詳細に行った。MRI撮像を行う方針としていたが、当施設でのマウス管理施設の管理工事・クリーンナップによる一時マウス管理中止の影響、及びCOVID-19再流行に伴う他施設への頻回な出入りが忌避されたことにより、特にMRI撮像に関する研究計画の進捗が大幅に遅れている。 令和4年度にはマウス管理施設のクリーンアップが終了したこともあり、実験計画の進行を加速していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
老齢マウス(50週齢以上)においては、腱板全層切離を行った後に、腱板構成筋のうち特定の筋に萎縮・脂肪変性が強く生じていることが組織学的検討により判明した。MRI撮像に当たっては、腱板のみならず安定したMRI撮像中のポジション維持が容易である下腿筋を用いて検討すべく、カルジオトキシン投与に加え軟性ワイヤー固定による筋萎縮モデルも安定して作成することに成功している。上述の様にマウス管理施設の予期せぬcloseの弊害により研究計画遂行に大幅な遅れを生じたため、令和4年度は研究計画の加速したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当施設でのマウス管理施設の管理工事・クリーンナップによる一時マウス飼育中止に伴い、遺伝子改変マウス(PDGFRa-tomatoマウス)を凍結胚保存し、工事完了後に凍結胚から起こすことに予算を計上していたが、本研究費を凍結胚を起こすことに年度を使用することができないとの判断があったため、次年度繰越とさせて頂きました。
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