Sfrp5の骨芽細胞に対する作用機序を明らかにする実験を行った。まずは、Halo-tagを融合したSfrp5を骨芽細胞に強制発現させ、プルダウンを行った。これを質量分析したところ120種類のタンパク質が同定された。この中の細胞外タンパク質36個の中には、Sfrp5と相互作用することが知られているWnt5aが含まれていた。この中で、実際に骨芽細胞で遺伝子発現のある7遺伝子について、shRNAを作製し、骨芽細胞への影響を調べた。いずれの遺伝子のノックダウンでもSfrp5の作用を打ち消す作用は認めなかった。 次にSfrp5によって活性化するシグナル経路を明らかにするために、骨芽細胞培養系に組換えSfrp5を添加し、微量転写開始点解析技術(CAGE)を行って活性化するプロモーターを網羅的に調べた。モチーフ解析により、Sfrp5を添加することにより活性化するものとして5つの転写因子が候補としてあげられた。このうち、骨芽細胞が実際に発現するEgr1およびTcf7l2について、Sfrp5の添加により遺伝子およびタンパク質レベルで増加することが確認された。このうち、Egr1をshRNAによりノックダウンしたところ、Sfrp5による骨芽細胞の分化促進作用は消失した。このことから、Sfrp5はEgr1を活性化し、骨芽細胞の分化を促進することが示唆された。 次に、生体に対するSfrp5の作用を確かめる実験を行った。Sfrp5または蛍光レポーターを過剰発現するアデノ随伴ウイルスを作製し、8週齢のマウスに静脈内投与したところ、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞での蛍光レポーターの発現が確認された。処置後4週目において、Sfrp5の過剰発現によって破骨細胞の形成は抑制された。しかしながら、骨量の増加が観察されなかった。これは、過剰なSfrp5によって破骨細胞が抑制され、カップリング因子が減少したためと考えられた。
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