研究課題
これまでの研究からAPAMは骨肉腫細胞株によってアポトーシスとカスパーゼ非依存性/活性酸素(ROS) 依存性細胞死を誘発し、後者のひとつにはフェロトーシスがあることが示された。また、H2O2が細胞死の重要なメディエーターであることも明確になった。H2O2がプラズマ照射液中に含まれることは広く知られており、それが細胞内H2O2濃度を増加させてH2O2依存性のMPMCを誘発すると考えられた。しかし、APAM中のH2O2を定量したところ、その濃度はμMレベルに過ぎず、大きな酸化ストレスを起こすとは考えにくかった。実際、同量のH2O2添加ではAPAMの抗腫瘍作用を含む生物学的効果は模倣できなかった。APAM作製中にオゾン(O3)の生成をその独特の臭気から発見した。O3はH2O2よりも強い酸化力を持つので、APAM中にO3が溶解してこれが酸化ストレスを起こすとの仮説を立てた。事実、APAM中には数十mg/Lの高い濃度のO3が存在することを見出した。そこで、純粋酸素を用いてO3溶液(ODM)を作成してその組成を調べた結果、APAMと同レベルのO3とH2O2を検出した。ODMはAPAMと同等の抗腫瘍作用を発揮した。さらに、MPMC、MPMCに関与するミトコンドリア酸化ストレス、ミトコンドリア輸送に必要な微小管リモデリングをH2O2依存性に誘発した。APAMと同様に、ODMも非腫瘍細胞ではMPMCも細胞毒性も示さなかった。ODMもフェロトーシスを含む鉄依存性細胞死を増加させた。さらに、Fe (II)プローブを用いた生細胞イメージングからAPAMと同様に、ODMもオルガネラ内の不安定Fe (II)を減少させることを見出した。これらの結果は、H2O2とFe (II)によって酸化的細胞死を誘発することによりO3がAPAMの抗腫瘍作用の決定的なメディエーターとなることを示す。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
European Journal of Cell Biology
巻: 103 ページ: 151422~151422
10.1016/j.ejcb.2024.151422
巻: 102 ページ: 151346~151346
10.1016/j.ejcb.2023.151346