研究課題/領域番号 |
21K09218
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
椎森 仁美 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20833891)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 翻訳制御 / CNOT4 / ユビキチン転移酵素 |
研究実績の概要 |
骨格筋筋線維の修復・再生過程は、運動機能のみならず個体の発生や恒常性維持に重要な役割を果たす。しかしながら、骨格筋修復・再生時における各素過程の分子基盤は未だ明らかではない。申請者はこれまでの研究から、遺伝子発現制御因子CCR4-NOT複合体の構成因子、ユビキチン転移酵素CNOT4がmRNA翻訳制御を介して、骨格筋修復・再生に機能する可能性を見出した。そこで、本研究では、骨格筋の修復・再生過程におけるCNOT4のユビキチン化標的因子とそれらによる翻訳制御機構の全体像を明らかにすることを目指して研究を進めている。 令和4年度は、マウス筋芽細胞C2C12の野生型及びCNOT4ノックアウト株を用いて、C2C12細胞の分化誘導時におけるユビキチン化タンパク質検出系の確立を試みた。内在性のユビキチン化タンパク質のpull-downが可能である人工タンパク質を用いて解析を進めたが、発現レベルが低い内在のタンパク質については、そのユビキチン化は検出できなかった。そのため、トランスフェクション効率が高いHEK293T細胞を用いて翻訳関連因子のCNOT4依存的なユビキチン化状態の解析を行い、翻訳開始抑制因子である4E-BP1や4E-TがCNOT4依存的にユビキチン化されていることを明らかにした。さらに、筋分化の過程でのCNOT4の挙動をユビキチン化標的タンパク質を詳細に解析するため、マウスES細胞を用いたMyoD発現誘導による骨格筋細胞への分化系を確立し、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、マウス筋芽細胞C2C12の野生型及びCNOT4ノックアウト株を用いて、C2C12細胞の分化誘導時におけるユビキチン化タンパク質検出系の確立を試みた。内在性のユビキチン化タンパク質のpull-downが可能である人工タンパク質を用いて解析を進めたが、発現レベルが低い内在のタンパク質については、そのユビキチン化は検出できなかった。そのため、トランスフェクション効率が高いHEK293T細胞を用いて翻訳関連因子のCNOT4依存的なユビキチン化状態の解析を行い、翻訳開始抑制因子である4E-BP1や4E-TがCNOT4依存的にユビキチン化されていることを明らかにした。さらに、筋分化の過程でのCNOT4の挙動やユビキチン化標的タンパク質を詳細に解析するため、マウスES細胞を用いたMyoD発現誘導による骨格筋細胞への分化系を確立し、解析を進めている。また、マウス個体を用いた下肢固定による筋損傷、回復についての解析の条件検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、CNOT4による翻訳関連因子のユビキチン化が翻訳制御にどのような影響を及ぼすのか検討する。また、マウスES細胞を用いたMyoD発現誘導による骨格筋細胞への分化系での CNOT4の挙動の解析やユビキチン化標的タンパク質の同定を行う。 さらに、マウス個体を用いた解析を行う。これまでに、下肢固定による筋損傷、回復についての解析の条件検討を行っている。令和5年度は、野生型マウス、CNOT4変異体を用いて、下肢固定による筋損傷を起こし、その後固定を解除して回復させる。筋損傷、回復時において経時的に筋繊維の断面積を測定することで、CNOT4の筋損傷、修復・再生における機能を明らかにする。また、マウス筋肉において、細胞で同定したCNOT4のユビキチン化標的タンパク質や、翻訳制御遺伝子の発現変動を解析する。 以上の解析から、筋芽細胞から筋繊維への分化時に、CNOT4によるユビキチン化を介した翻訳制御機構について理解する。
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