骨格筋筋線維の修復・再生過程は、運動機能のみならず個体の発生や恒常性維持に重要な役割を果たす。しかしながら、骨格筋修復・再生時における各素過程の分子基盤は未だ明らかではない。申請者はこれまでの研究から、遺伝子発現制御因子CCR4-NOT複合体の構成因子、ユビキチン転移酵素CNOT4がmRNA翻訳制御を介して、骨格筋修復・再生に機能する可能性を見出した。そこで、本研究では、骨格筋の修復・再生過程におけるCNOT4のユビキチン化標的因子とそれらによる翻訳制御機構の全体像を明らかにすることを目指して研究を行った。 令和5年度は、野生型とCNOT4ヘテロノックアウトマウスを用いて、下肢固定による筋萎縮にCNOT4がどのように寄与するのか明らかにするため解析を行った。その結果、CNOTヘテロノックアウトでの有意な筋重量の低下と筋横断面積 (CSA) の減少がみられた。さらに、筋萎縮時に特異的な遺伝子の発現上昇をRT-qPCRで確認された。本研究では、翻訳開始抑制因子である4E-BP1や4E-TがCNOT4依存的にユビキチン化されることにより、筋分化に必要な遺伝子が効率的に翻訳されることで、筋分化が誘導されることを明らかにした。また、マウス個体でもCNOT4が筋萎縮において重要な役割を持つことが際された。さらに、確立したマウスES細胞を用いたMyoD発現誘導による骨格筋細胞への分化系を用いて、今後詳細な解析を進めていきたい。
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