運動器の主要な構成体である骨は、その周囲の筋肉と協調して恒常性を維持している。よって、骨損傷時には、骨組織自体の因子の他に、周囲の組織環境因子としての筋組織の役割は骨組織の修復やその後のリモデリングに重要であると考えられる。 本研究では、骨・筋組織両者に関わるサイトカインであるマイオカイン:irisinの骨折治癒過程における効果について、骨形成タンパク(BMP)との相互作用機構を明らかにする。 In vivo BMP誘導骨形成に対するirisinの効果を検証するために、ポリエチレングリコールペレットにrh-BMP2(5μg)を含有した。マウスの背筋膜下にこれらペレットを埋植し、rh-irisin(100μg/kg)をマウス腹腔内に全身投与を行った。irisinによるBMP誘導異所性骨形成に対する影響を検討するため、rh-irisin非投与群をコントロールとしてマイクロCTを用いた骨微細構造解析を行った。rh-irisin(100μg/kg)投与群ではコントロール群に比べて平均骨体積(TV)、平均骨梁体積(BV)、平均骨微細構造(BV/TV)及び平均骨塩量は有意に増加した。また、in vitroの実験系において、C2C12細胞を培養し、rh-BMP2 (200ng/mL) 添加し骨芽細胞分化を誘導し、rhirisin(100ng/mL)投与後のRNAを回収し、骨芽細胞分化マーカーとしてALP、Runx2、オステオカルシン、オステオポンチンの発現量をReal time RT-PCR法を用いて解析した。rh-BMP2投与によって各骨芽細胞分化マーカーの発現量の上昇を認めた。rh-irisin 100ng/ml共投与群ではrh-BMP2単独投与群に比べて各骨芽細胞分化マーカーの有意な発現上昇を認めた。また、これら発現上昇はインテグリンαVレセプター阻害薬の投与により抑制された。
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