研究課題/領域番号 |
21K09237
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩本 卓士 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10348675)
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研究分担者 |
宮本 健史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70383768)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外傷性異所性骨化 / 炎症性サイトカイン / TNF-α |
研究実績の概要 |
外傷性異所性骨化は重度の関節拘縮・強直を引き起こし著明な日常生活動作の低下につながる。治療として異所性骨化部位の外科的切除を行っても再度骨化を生じる場合も多く、確立した治療法および予防法がないため治療に難渋する。本研究は外傷性異所性骨化モデルマウスを作成し、様々なサイトカイン環境下での骨化病巣の評価を定量的および定性的に行うことで異所性骨化に対する炎症性サイトカインの関与を検討し、同定された候補サイトカインをターゲットとした新規治療法の探索を目的とする。本年度は第1段階としてアキレス腱切断マウスを外傷性異所性骨化モデルマウスとして、各種の炎症性サイトカインノックアウトマウス(TNF-αKOマウス、I L- 6KOマウス、IL-1β KOマウス)に同様の手技を行いコントロール群との比較を行った。実験動物用3DマイクロX線CTコンピュータ断層撮影装置と3D画像解析ソフトウェアを使用し異所性骨化部の体積量を測定し比較検討したところ、TNF-αKOマウスにおいてアキレス腱切断後10週での石灰化体積がコントロール群と比較して有意差をもって小さいという結果が得られた。同時に新規治療薬候補の探索として進行性骨化性線維異形成症の治療薬として臨床使用されているRapamycin (mTOR阻害薬) をアキレス腱切断マウスに投与したところ、同様に10週での石灰化体積が抑制されていた。これらのモデルマウスから得られた結果を分子生物学的に検証することを次年度に計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は第1段階としてアキレス腱切断マウスを外傷性異所性骨化モデルマウスとして、各種の炎症性サイトカインノックアウトマウス(TNF-αKOマウス、I L- 6KOマウス、IL-1β KOマウス)に同様の手技を行いコントロール群との比較を計画していた。実験動物用3DマイクロX線CTコンピュータ断層撮影装置と3D画像解析ソフトウェアを使用し異所性骨化部の体積量を測定し比較検討したところ、TNF-αKOマウスにおいてアキレス腱切断後10週での石灰化体積がコントロール群と比較して有意差をもって小さいという結果が得られた。同時に新規治療薬候補の探索として進行性骨化性線維異形成症の治療薬として臨床使用されているRapamycin (mTOR阻害薬) をアキレス腱切断マウスに投与したところ、同様に10週での石灰化体積が抑制されていた。これらのモデルマウスから得られた結果を分子生物学的に検証するため骨形成細胞培地にTNF-αを添加し、骨芽細胞系マーカーや破骨細胞系マーカーの発現量変化を定量するin vitroの実験を開始し、さらにはアキレス腱切断部の病理組織切片での免疫組織染色により局所でのサイトカイン発現の解析を開始している。計画は順調に進行しており、次年度に予定していた第2段階の研究に着手している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は研究の第2段階として異所性骨化に対するTNF-αおよびRapamycinの作用をin vitroの面から検証する。骨形成細胞培地にTNF-αを添加し、骨芽細胞系マーカーや破骨細胞系マーカーの発現量変化の定量を行う。またin vivoではアキレス腱切断部の病理組織切片の免疫組織染色により局所でのサイトカイン発現を確認する。サイトカイン発現量の定量比較にはwestern blotting法および組織から抽出したtotal mRNA を用いてreal-time PCR法にてmRNA発現量の定量化を行う予定である。これらのデータから外傷性異所性骨化の発症に対するTNF-αの関与を特定する。 第3段階としては、Rapamycin以外にも臨床応用可能な阻害薬を異所性骨化モデルマウスに投与し、異所性骨化に対する予防効果を検討する。候補となる阻害薬としては、異所性骨化に対する抑制効果がこれまでに報告されている非ステロイド系消炎鎮痛剤、ステロイド、骨代謝に関与するビスフォスフォネート製剤、抗RANKLモノクローナル抗体、そして抗サイトカイン療法として近年広く臨床応用されている抗TNF-α抗体などを外傷性異所性骨化モデルマウスに投与し、異所性骨化抑制効果をマイクロCTによる定量化および組織学的評価により確認する。以上により外傷性異所性骨化の病態解明と新規治療法の候補を探索することを本研究の最終目標とする。以上の研究計画は研究開始当初の予定通りであり、研究を遂行する上での問題点はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
画像解析およびデータ保存用ワークステーションの購入のために前倒し支払請求を行ったが、実験の進行に伴い試薬および消耗品に必要な経費が増加したためワークステーション購入は次年度に繰り越しとしたため。
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