研究課題/領域番号 |
21K09240
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高藤 義正 近畿大学, 医学部, 講師 (90734864)
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研究分担者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エクソソーム / 筋・骨連関 / 骨再生 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
本研究は、筋と骨の連関機構(筋・骨連関)におけるエクソソーム(exo)の関与に着目し、筋由来exo(Myo-exo)の骨への作用を明らかにすることを目的としている。これまでに研究代表者は、Myo-exoが骨芽細胞の分化を促進し、破骨細胞の形成を抑制することをin vitroの実験系で明らかにしており、本研究ではMyo-exoの骨組織再生作用について、大腿骨欠損マウスモデルを用いて検討した。 研究に用いるMyo-exoはマウス筋細胞株であるC2C12細胞から回収した。コンフレントに培養したC2C12細胞を48時間培養した培養上清を回収し、遠心 (3,000×g)、フィルター濾過 (0.22 μm)によって細胞デブリなどの異物を除去した後、超遠心 (100,000×g)にて沈降したペレットをMyo-exoとして実験に用いた。得られたMyo-exoはBCAassay法によって蛋白量を定量した。また、Western blottingによるエクソソーム特異的な抗原(CD9, CD81)の発現を確認するとともに、Nanosightによる粒径解析によって、得られた粒子の大部分が200 nm以下の粒径であることを確認した。 健常マウスおよび骨修復が遅延する、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルマウスの大腿骨に0.8mm径の欠損を作製し、Myo-exoを局所移植した。移植担体として、1.5mm径に成型した生分解性のゼラチンハイドロゲルを用いた。移植9日後に欠損部近辺を動物用CT装置で撮影した。その結果、糖尿病マウスは健常マウスと比べて骨再生の遅延を認め、欠損部面積が大きかった。しかし糖尿病マウスにMyo-exoを移植することで、骨欠損部面積が有意に減少し、糖尿病によって引き起こされる骨修復の遅延がMyo-exoの局所移植によって改善することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は骨再生に対するMyo-exoの局所移植効果の検討を計画しており、予定通りのスケジュールで検討を進めることができた。筋細胞から回収したMyo-exoの定量、解析を行うとともに、Myo-exoの局所移植が糖尿病モデルマウスにおける骨修復の遅延を改善することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Myo-exo投与による骨修復促進作用が認められたため、次に骨修復メカニズムの解析を行う。骨損傷後の骨修復の過程では、免疫細胞の集積、血管新生、軟骨性仮骨の形成、骨形成、破骨細胞も関与した骨リモデリングが段階的に進行する。そこで、Myo-exo移植後2~9日後の各タイムポイントにおいて骨欠損部周囲の骨組織を回収し、骨組織からRNA、タンパクを抽出、組織切片を作成する。軟骨形成 (トルイジンブルー染色、Sox9、アグリカン、2, 10型コラーゲン発現)、骨形成 (Osterixと ALP染色、Runx-2、Osterix、1型コラーゲン、ALP、オステオカルシン発現)、破骨細胞 (TRAP染色、NFATc1、TRAP、カテプシンK発現)、血管形成 (CD31、VEGF染色、VEGF、HIF-1α、TGF-β発現)、骨マクロファージ (F4/80染色)の変化をそれぞれ評価する。以上の解析により、骨修復の時期、関与する細胞の視点から、Myo-exoが骨修復・再生過程に作用を発揮するメカニズムを、組織・細胞・分子生物学的に明らかにする。 また、骨粗鬆症に対するMyo-exoの作用についても検討を予定している。健常マウス、両側卵巣摘出マウスに対し、8週間、Myo-exoを尾静脈投与し、動物用CT装置を用いて、これらマウスの脛骨・大腿骨における皮質骨密度、海綿骨密度、骨形態指標、骨強度を測定する。これらの解析から、骨粗鬆症に対するMyo-exoの全身投与の効果を明らかにする。
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