研究課題
アキレス腱の老化の組織形態変化を時系列に沿って解析した。4、7、13、22、28ヶ月齢のC57BL/6のマウスそれぞれ5匹ずつから、アキレス腱を採取し、片方は凍結切片作成用ブロック、もう片方はRNA抽出を行なった。まず、29ヶ月齢のマウスのアキレス腱の組織解析をしたところ、腱の組織の半分以上が石灰化していたた。この組織変性がいつから起こるのかを同定するために、4、7、28ヶ月のマウスの組織切片を非固定非脱灰条件下で作成し、石灰化と骨化を解析するためにアリザリンレッドとアルカリフォスファターゼ染色を行った。これらの解析の結果、アキレス腱の骨化はすでに7ヶ月齢のマウスにおいて認められ、加齢に伴って骨化範囲が広がることを明らかにできた。また、現在の組織解析の切片作成法では、硬い組織である骨を切ることができないために、アキレス腱のみを切り出して準備しなければならない。骨化の位置関係を腓腹筋、ヒラメ筋、脛骨、踵骨との比較によって解析したいと考え、骨を非脱灰で切片化できる川本法を用いて、老齢マウスのアキレス腱の骨化の位置を解析した。この結果、既報と同様、踵骨付け根を主体とすることが解った。しかし、骨化したアキレス腱を通常の川本法で切片化することが難しく、クリアな組織像を得ることができないと解ったので、さらなる改善が必要とされる。また、これらの異所性骨化が内軟骨性骨形成を経ているのかを探るために、軟骨基質を染色したところ、一部は染色されているが、大部分は染まらず、直接骨化が起こっている可能性が示唆されている。
2: おおむね順調に進展している
マウスを採取するために時間を必要としたが、十分な数と時系列に沿ったタイムポイントが確保でき、今後の実験のための準備が整えられた。さらに、アキレス腱を解析する上で困難な点と克服すべき点がクリアになった。
当初予測したより、腱組織の加齢による変性が大きいことが明らかになり、この組織変化を、加齢的な代謝の変化や炎症と関連付けて明らかにする予定である。
年度の途中で、研究者が受入施設を移動したため、その間の支出計画に遅れがあった。次年度内に、再び、施設を移動する予定があり、移動先の施設において、研究環境を整えたり、試薬を準備する必要があるために、次年度使用額として計上している分を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Frontiers in Cell and Developmantal Biology
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Bone
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