研究課題/領域番号 |
21K09251
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
今釜 崇 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (00634734)
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研究分担者 |
坂井 孝司 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00444539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工関節置換術 / 人工関節感染 / 早期診断 / プレセプシン |
研究実績の概要 |
人工関節置換術はさまざまな関節障害を有する患者に行われ、良好な長期成績が多数報告されている。しかし頻度は稀であるが注意すべき術後合併症の一つが人工関節感染である。人工関節感染は一度罹患すると複数回の手術を要することが多く、数か月から1年程度の治療を要することも珍しくない。そのため早期の診断が最も重要となるが、信頼性の高い検査や診断基準は存在しない。そこでわれわれは、プレセプシンに注目した。プレセプシンは細菌が単球等に貪食された際に放出されるたんぱく質で、敗血症の診断において血中プレセプシン値は有用なバイオマーカーとされている。そこで人工関節感染の新規バイオマーカーとして、血中および関節液中のプレセプシン値が有用なのではないかと仮定し研究を開始した。現在まで人工関節感染患者34名、非感染性関節炎患者28名の血中および関節液中プレセプシンを計測している。人工関節感染、非感染性関節炎の患者背景はそれぞれ、平均年齢73.2±12.9歳、69.8±11.7歳、性別男性18名、女性16名と男性12名、女性16名、平均BMIは23.5±4.2、24.8±5.1でいずれも有意差を認めなかった。血中プレセプシンは人工関節感染429.9±219.4pg/mL、非感染性関節炎242.2±193.4pg/mL、関節液中プレセプシンはそれぞれ2184.2±1076.2pg/mL、892.6±199.3pg/mLであった。いずれも統計学的有意に関節液中プレセプシンで高値であった。また血中および関節液中プレセプシンのROC曲線を作成し、それぞれarea under the curve0.857、0.963、感度73.8%、90.0%、特異度78.1%、92.5%であった。症例数を増やしプロカルシトニン等の既存のバイオマーカーと比較する必要はあるが、関節液中プレセプシンの良好な結果が予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に予期していない事例もなく、現在、合計52例の症例について血中、関節液中プレセプシン値を測定しており、中間解析では人工関節感染例で非感染例と比較して有意にプレセプシン値が高値を示しており、ROC曲線のarea under the curve、感度、特異度も高値であり人工関節感染のバイオマーカーとなる可能性が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、現在までと同様に人工関節感染例、非感染例の症例数を増やし、血中、関節液中プレセプシン値を測定する。得られた結果を統計学的に解析し、人工関節感染例と非感染例の2群間比較と、それぞれのROC曲線からarea under the curve、感度、特異度を算出してプレセプシンの有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費として主にプレセプシンの測定に必要な物品に使用しているため、症例数によって金額が異なるため次年度使用額が生じたと考えられる。今後、さらに症例数を増やす予定のため、必要物品が増えると考えられ次年度使用額と併せて使用予定である。
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