本研究では有痛性偽関節の治療法の確立を念頭に有痛性偽関節と無症候性偽関節の病態の違いについて動物実験を通して解明することを目標としている。実験の概要として、まずは段階的な不安定性を有する偽関節モデルを作成し、疼痛行動評価を観察し、偽関節及び不安定性による疼痛について評価する。次に脊髄後根神経節の疼痛関連分子を免疫組織学的に評価し、偽関節の神経分布及びその特性を解明する。 骨折モデル確立のため骨折部の安定性の差異で不安定性小モデル及び不安定性大モデルを検討した。骨折部の安定モデルとしてプレート及びスクリュー4本での固定を行ったところ6週間での骨癒合を認め、偽関節群はラバーシートを挿入することで骨折部の転位なく偽関節を作成することができた。 プレート固定した大腿骨の3点曲げ試験を行い、不安定性小群と大群の間に統計学的に有意な剛性の違いを観察した。荷重分布による疼痛行動評価では、不安定性大群において疼痛が強いことが示唆され、さらに脊髄後根神経節のCGRPの発現率においても2群間に有意差を認めている。さらに、神経成長因子や炎症性サイトカインの発現についても比較検討を行い、不安定性大群において神経成長因子の発現率が高い傾向を認めている。抗神経成長因子抗体製剤投与による疼痛行動の変化を確認する予定である。
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