研究実績の概要 |
変形性膝関節症(膝OA)の治療法の開発は重要な課題である. しかし, 疾患の分子レベルの病態の理解はいまだ乏しく, 開発の障壁となっている. 近年の早期変形性膝関節症(膝OA)の研究にて, 膝OAの発症や進行に内側半月板逸脱(MME)が関連することが報告されている. また, 我々は, MME幅が脛骨内側の軟骨成分と骨成分を合算した骨棘幅と関連することを示した. つまり, MMEを進行させる原因に骨棘形成があると考えられ, 骨棘が治療ターゲットになると考えられる. また, 我々は,基礎研究にて, 膝OAの骨棘形成に滑膜が重要なことを報告しており, 滑膜は骨棘形成の重要な因子である.以上のことから, 本研究の目的は, 膝OAの滑膜炎を制御することにより, 骨棘形成およびそれに付随する半月板逸脱の抑制を柱とする膝OAの新たな治療法の開発である. 初年度である本年は, 膝OA各進行期の骨棘形成と滑膜の炎症メディエーターおよび多能性前駆細胞の解析のため, 各病期の手術検体である滑膜および採取可能な場合は骨棘を採取し, 組織切片および組織からRNAを採取し, 各種炎症性メディエーター(TNF-α, IL-6, IL-1β, TGF-β)の発現の測定を開始した. また, 同様のマーカーをマウスモデルでも確認するため, 半月板を逸脱させるモデルであるDMM (destabilized medial meniscus) モデルを用いて膝OAを発症させ, 術後2週, 4週, 8週で病理切片の作成, また滑膜および骨棘を採取し, 組織切片および組織からRNAを採取し, 各種炎症性メディエーター(TNF-α, IL-6, IL-1β, TGF-β)の発現の測定を開始した. 現在データを解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度中に, 手術検体およびマウス検体の測定値を出す予定であったが, 測定値のばらつきを是正するために多数回の実験が必要であったことや試薬やプラスチック物品の不足などの欠品などにより, 実験に遅れが生じているが, 今後その遅れを取り戻す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は, 測定値のばらつきを是正するために多数回の実験が必要であったことや試薬やプラスチック物品の不足などの欠品などにより, 実験に時間を要したこと, 新型コロナウイルスの蔓延により予定学会が中止やWebになったことにより使用額が減少したため, 予算の使用に支障をきたした. 2022年度は,本研究を順調に進め繰り越し予算を使用予定である.
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