研究課題/領域番号 |
21K09260
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
添田 聡 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (90318569)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | VI型コラーゲン / 骨芽細胞 / ラット / ウシ / NG2 / TEM8 / 骨膜 / 一次オステオン |
研究実績の概要 |
・研究1 緻密骨骨幹部骨膜の骨芽細胞におけるVI型コラーケン受容体(NG2とTEM8)の発現とVI型コラーケン(Col6)沈着領域の関連性に関する研究 免疫組織化学的検索において、生後7-28日齢のラット大腿骨骨幹部では、緻密骨表層1次オステオン内vascular cavityの血管周囲結合組織にCol6の沈着が認められたが、vascular cavityの周縁部で1次オステオン近傍ではCol6の沈着は認められなかった。胎齢4、6、8ヶ月、生後1日齢のウシ大腿骨骨幹部では、細胞性骨膜の結合組織にCol6の沈着が認められたが、緻密骨近傍の細胞性骨膜結合組織にはCol6は認められなかった。ラットおよび牛において、RUNX2+/Osterix-の未成熟骨芽細胞はCol6陽性領域に分布していたが、RUNX2+/Osterix+の成熟骨芽細胞はCol6陰性領域に認められた。また、これらの骨芽細胞はNG2とTEM8を発現していた。以上の結果から、骨膜において、骨芽細胞はCol6が沈着していない部位において成熟骨芽細胞へと分化することが確認され、さらにCol6はNG2やTEM8を介して骨芽細胞の分化を制御している可能性が示唆された。 ・研究2 各分化段階の骨芽細胞に対するCol6とETPの作用に関する研究 ラット初代培養骨芽細胞をCol6コーティングディッシュで培養した結果、培養初期の未成熟な骨芽細胞においては、Osteopontin発現の増加が認められ、培養後期の成熟骨芽細胞においては、石灰化骨基質産生の減少、成熟骨芽細胞のマーカーであるOsterix発現の減少、骨細胞のマーカーであるDMP1とSOST発現の減少が認められた。以上の結果から、Col6は成熟骨芽細胞への分化と骨細胞への分化を抑制することが示唆された。しかしながら、今回は、ETP添加による骨芽細胞の変化は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回計画したウシの大腿骨骨膜における免疫組織化学において、ウシのOsterix、TEM8およびNG2に特異的に反応する抗体の選択に長時間を要したため、当初予定していたウシの骨芽細胞におけるTEM8の発現の詳細な検討がなされていない。 さらに、現在用いているマウス骨芽細胞株の骨基質産生誘導の条件設定に長期間要したため、マウス骨芽細胞株に対するCol6の作用の検索が不十分である。 また、本年度中、市販のリコンビナントETPを用いて骨芽細胞に対するETPの作用を検索したが、有意な変化が認めらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
・研究1 緻密骨骨幹部骨膜の骨芽細胞におけるVI型コラーケン受容体(NG2とTEM8)の発現とVI型コラーケン(Col6)沈着領域の関連性に関する研究 2022年度は、ウシの大腿骨骨膜に分布する骨芽細胞におけるTEM8の発現とCol6沈着部位との関連性を免疫組織学によって詳細に検索する。また、TEM8には受容体型と可溶型が存在し、可溶型は競合的に受容体型TEM8の機能を抑制することが知られているため、両者の発現を免疫組織化学的にあるいはin situ hybridization法によって解析する。 ・研究2 各分化段階の骨芽細胞に対するCol6とETPの作用に関する研究 今回、ラット初代培養骨芽細胞に対して3種類のリコンビナントETPの添加を行ったが、有意な変化が認めらなかった。このため、今後、ETPの合成ペプチドの添加、および細胞へのETP遺伝子の導入による強制発現を実施することを検討していく。また、Col6添加による骨芽細胞の分化に対する作用を、マウス細胞株(MC3T3E1)を用いて解析する。 ・研究3 Col6受容体の骨芽細胞分化の影響 2022年度は、NG2およびTEM8の骨芽細胞分化に対する機能を解析するために、マウス細胞株(MC3T3E1)を用いて、遺伝子ノックダウン法(siRNA法、shRNA法、CRISPR/Cas9法)の実験条件の検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中に使用予定であった試薬(shRNAウイルスベクター、抗体)の在庫がなく、納品が2022年4月以降になったため。
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