研究課題/領域番号 |
21K09266
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
松井 寛樹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (70612802)
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研究分担者 |
渡邉 研 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 部長 (10342966)
酒井 義人 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (70378107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腰部脊柱管狭窄症 / 黄色靱帯 |
研究実績の概要 |
高齢者によくみられる腰部脊柱管狭窄症においては不可逆的な加齢変性によるところが大きく、脊柱管を手術的に拡大する以外の有効な根本的治療に乏しく、外科的手技が選択されることも少なくない。しかし本疾患の原因の一つである黄色靱帯の肥厚が加齢変性以外の要因で起こる可能性のあることを以前より我々は研究成果として指摘し、geneticな要素を制御することで新規治療および予防の可能性を考え本研究を立案した。この加齢変性に依存しない黄色靱帯肥厚を”Hereditary stenosis”とし、その成因となりうる病因、発生機序に関してゲノム解析を行うためには臨床的な定義づけが必要であると考えた。まずは1,000例を超える腰部脊柱管狭窄症例の黄色靱帯を画像的にMRIで評価し、力学的影響の受けにくいと考えられるL1/2高位の黄色靱帯肥厚を統計学的解析から数学的cut-off値を決定することを初年度の研究計画とした。黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio(FCR)の若年成人平均値(YAM)における年齢設定を決定するため、1,068名の画像を解析し、データ分布の正規性から50歳以下の若年者データを採用することとした。50歳以下のYAM+2 標準偏差(SD)をL1/2黄色靱帯肥厚のcut off値とし、初年度中に50歳以下で腰椎MRIを撮像しえた680例の解析を終え、目標1,000症例の解析結果を待って決定したcut-off値により、次年度以降の臨床解析によるHereditary stenosisの病態と臨床的特徴、また基礎研究として発生機序解明のためのゲノム解析に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腰部脊柱管狭窄症における黄色靱帯肥厚において、加齢変性に依存しない遺伝的素因に起因して発生する可能性のある”Hereditary stenosis”を臨床的に定義するため、腰椎変性変化の影響を受けにくいL1/2高位の黄色靱帯面積(CSA)を、腰部脊柱管狭窄症患者1,068名で計測した。黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio (FCR)を計算し度数分布をみたところ、年齢50歳を境に増加していたため、L1/2 FCRの若年成人平均値(YAM)の設定年齢を50歳前後に設定する必要があると考えた。そこで年齢を40歳以下、50歳以下、60歳以下に区分してL1/2 FCR値がKolmogorov-Smirnov検定で正規分布する年齢が50歳以下であったことから、50歳以下のYAM+2 標準偏差(SD)をL1/2黄色靱帯肥厚のcut off値とすることと決定した。そこで50歳以下の腰椎MRIを後向きに収集し、研究初年度において680例(男性400例、女性280例;平均年齢37.7±9.5歳)の解析を終了した。L1/2 FCRの平均値は0.092、SD 0.032、Kolmogorov-Smirnov p=0.00582と正規性を認めている。
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今後の研究の推進方策 |
腰椎黄色靱帯肥厚において、加齢変性に依存しない遺伝的素因に起因して発生する可能性のある”Hereditary stenosis”を臨床的に定義するため、腰椎変性変化の影響を受けにくいL1/2高位の黄色靱帯の異常値cut-offを決定するため、50歳以下のL1/2高位の黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio (FCR)データを1,000例収集する。L1/2 FCRの若年成人平均値(YAM)+2 標準偏差(SD)を求めた上で、cut-off値を決定する。この値に従い”Hereditary stenosis”を臨床的に定義することで、臨床およびゲノム解析が可能となる。臨床的にはHereditary stenosisを有する腰部脊柱管狭窄症患者の病態をまとめ特徴的な臨床所見、治療成績、予後を明らかにする。またバイオバンク登録した血清を用い、gDNA提供を受け、Asian Screening Array (ASA, イルミナ社)を用いてタイピングを行い、Hereditary stenosis例とnon- Hereditary stenosis例に分類の上、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行う。インピューテーションによる擬似全ゲノム解析を進め、レアバリアントの抽出も進め、得られた解析データの生物学的解釈についてパスウェイ解析を行う。最終年では末梢血のRNA-seqを行い、eQTL解析を行いHereditary stenosisに対する発現調節を受ける遺伝子について解析深度を高める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による通院控えにより被験者データ収集が予定よりやや遅れており、異常値カットオフの決定が年度内に完了できず、次の段階に進めなかった。翌年度においては分類を決定のうえ、予定しているゲノム解析に着手したい。
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