軟部肉腫は軟部組織に発生する非上皮性悪性腫瘍であり、健常組織をつけて腫瘍を摘出する広範切除術が標準治療である。軟部肉腫と健常組織の境界を見極めることは切除縁を設定するのに重要だが、手術中にその境界をみつけ、判断するのは難しい。本研究では、ヒト指用に開発されたアーク型光音響トランスデューサーを用い、ラット脂肪組織炎症モデルおよびヒト軟部肉腫周囲の脂肪組織の光音響特性と病理組織所見を比較検討することにより、本装置の妥当性および臨床応用の可能性について検討し、最終的に軟部肉腫の術中切除縁評価が可能な3次元光音響装置開発を目指すものである。 一昨年度は、当初の計画ではラットを用いた脂肪組織炎症モデルを用いて脂肪に適したレーザー波長の探索を行う予定であったが、肉腫モデルマウスを作成し観察を行うほうが、合目的と考えられ、研究に用いる肉腫株の選定、培養条件の最適化と投与する色素の最適化の探索を行った。昨年度は、選定した肉腫株の培養を行い、安定した継代を行った。肉腫モデルマウスを作るべく免疫不全マウスに肉腫株の移植を行ったが、肉腫の生着を安定して得ることが難しく、安定した生着が困難であった。 今年度は、移植する部位や深度、またはマウスの種類によっても生着の成否が変わる可能性がを考え、使用する免疫不全マウスを変更して実験を行った。しかしながら、アーク型光音響トランスデューサーを用いた観察が可能な肉腫モデルマウスを安定して作成することは困難であった。ヒト軟部肉腫周囲の脂肪組織の光音響特性と病理組織所見を評価するのに必要な、軟部肉腫症例の蓄積は継続して行っており、本研究終了後も、引き続き軟部肉腫に関連する研究を行っていく。
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