研究課題/領域番号 |
21K09269
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
宮腰 尚久 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90302273)
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研究分担者 |
本郷 道生 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (50375250)
粕川 雄司 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (60375285)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 骨粗鬆症 / 運動療法 / ビスホスホネート薬 |
研究実績の概要 |
本研究では「慢性腎臓病(CKD)モデルラットにおいてビスホスホネート薬と運動療法の併用が骨の脆弱化や筋萎縮を改善するかどうか,およびそれらの腎臓に対する安全性を検証すること」を目的としている. 研究実施計画にそってWistar系雄ラット(8週齢)を4週間0.75%アデニン飼料で飼育した後,20週齢まで普通飼料で飼育しCKDモデルラットを作製した.20週齢で溶媒群(溶媒投与,非運動), ビスホスホネート群(ビスホスホネート[アレンドロネート] 50μg/kg/day連日皮下注), 運動群(トレッドミル運動, 20 m/分, 60 分/日, 5日/週), 併用群(ビスホスホネート投与とトレッドミル運動を併用)の4群に分けた(各群n=9~10). さらに普通飼料で飼育したコントロール群を加え,治療開始時の20週齢と10週の治療後30週齢で,1)骨密度:全身,腰椎,大腿骨,2)骨強度:大腿骨骨幹部3点曲げ試験と大腿骨遠位顆部圧縮試験,3)血清学的評価:尿素窒素,クレアチニン,リン,カルシウム,および4)尿検査:アルブミン,クレアチニンを評価した. 20週齢のCKDラット(溶媒群,ビスホスホネート群,運動群,併用群)の全身,腰椎,大腿骨の骨密度と骨強度は低下した.30週齢のビスホスホネート群と併用群の全身,腰椎,大腿骨の骨密度は他の3群に比べて有意に高値であった.また,併用群の骨強度は,ビスホスホネート群と運動群に比べ 増加していた. 血清生化学検査と, 尿検査ではビスホスホネート薬投与による腎機能の悪化はなかった. これまでの結果より,CKDラットにおいてビスホスホネート薬と運動療法の併用は腎機能を悪化させることなく,骨密度と骨強度を改善することが示された.併用療法がCKDにおける骨脆弱性の改善に繋がる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1年目までに慢性腎臓病(CKD)モデルラットを作製し,1年から1年半までに溶媒投与,ビスホスホネート投与,運動療法,およびそれらの併用療法を終了する予定としている.現在,すべての治療介入は終了し,腰椎および大腿骨骨密度の測定,大腿骨3点曲げ試験と大腿骨顆部圧縮試験による骨強度の評価を終了している.また,血液生化学検査で血清カルシウム,リン,および腎機能に関連するクレアチニンを測定し,腎機能が悪化していないことを確認している. 2年目までにすべての評価を終える予定で,骨形態計測および骨格筋についての評価を行っている.以上より,現在までの研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
慢性腎臓病(CKD)における身体機能の低下や骨折リスクの上昇には,骨のみならず骨格筋の萎縮も関与することが知られており,筋萎縮に対する有効な治療法が期待されている.これまで本研究では,骨についての評価はおおむね終了しているが,骨格筋についての評価を現在おこなっている. 背筋および前脛骨筋より組織標本を作製し筋線維断面積と筋線維タイプの割合を評価する.筋の組織標本の作製と染色は,手技は確立しており評価中である.さらに,背筋と下腿三頭筋における筋の分化(同化)に関連する遺伝子と筋の萎縮(異化)に関連する遺伝子の発現をRT-PCR法にて評価する.RT-PCRの手技は習得し,当大学の機器センターにも協力を頂き解析を進めている. 今後,CKDモデルラットにおけるビスホスホネート薬と運動療法の併用により,骨のみならず骨格筋の萎縮を予防・改善することにつながるか,評価し論文を作成する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルラット作製が予定以上に順調に進み,動物購入や飼育のための費用が抑えられた. 令和4年度に実施予定の骨格筋における筋同化および異化伝子発現を評価するためのRT-PCR法に必要となるプライマーなどの購入に使用予定である.
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