研究課題/領域番号 |
21K09271
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 教授 (10345291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膝 / 変形性関節症 / 骨棘 / レントゲン / 半月板 / 半月板逸脱 / 軟骨 / MRI3次元解析 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症は主に加齢が原因で軟骨が摩耗し、膝痛等の症状により歩行能力に障害を与える退行性疾患だ。変形性膝関節症の診断はレントゲン検査による。ほぼ9割は内側大腿脛骨関節に最も強い変化が生じる。代表的なレントゲン所見は内側大腿関節の裂隙狭小と骨棘形成だ。 レントゲン検査の代表的な撮影方法は膝伸展位での立位正面像だ。他方、膝45度屈曲位での立位正面像はローゼンバーグ撮影とも呼ばれ、内側大腿関節の裂隙狭小変化を伸展位像より早く検出できる点で有用だ。屈曲位正面像が変形性膝関節症の初期変化を捉えやすいのは、大腿骨側軟骨の変化が最初に生じる部位が、伸展位で接触する領域ではなく、45度屈曲位で接触する領域であるためと現時点では考えられている。 半月板は大腿骨と脛骨の間の内側と外側に存在する三日月状の線維軟骨だ。内側半月板は、半月板の損傷や変性とともに膝中心から遠ざかるようにずれ、逸脱する。2010年代には、内側半月板逸脱が変形性膝関節症の発症・進行に関与することが報告されるようになった。 MRIは膝の大腿骨軟骨、半月板、脛骨軟骨を直接描出することから、レントゲン像より多くの情報を与える。しかし通常の2D画像では限られた断面の情報しか示さない。私達は10年前から膝MRI3D解析システムの開発に取り組み、膝のMRI画像の骨・軟骨・半月板を自動抽出し、3D構築するシステムを数年前に開発した。私達はこの膝MRI3D解析システムを用い変形性膝関節症の病態解明を目的とした疫学研究を行うため、2018年10月から1年間に、561人の3D解析可能なMRIデータと伸展位及び屈曲位立位正面のレントゲン検査データを収集した。本研究課題の目的は#1膝立位正面レントゲン像での伸展位と屈曲位との内側裂隙の差は何に起因するか、#2 膝立位伸展位正面レントゲン像での内側骨棘幅と内側裂隙幅の意義 を明らかにすることだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膝立位正面レントゲン像での伸展位と屈曲位との内側裂隙の差は何に起因するかに関して検討した。内側裂隙幅を構成するものは大腿・脛骨軟骨と内側半月板であり、内側半月板では逸脱が関与するものと推察される。そこで軟骨厚と内側半月板逸脱のどちらが、伸展位と屈曲位での内側裂隙幅の差に影響するか検討した。 30歳代から70歳代までの561名を対象とした。内側裂隙幅は手動で測定し、伸展位から屈曲位を引いた値を内側裂隙幅の差(ΔmJSW)とした。MRIデータから3D解析システムを使用して、大腿脛骨関節軟骨の内側領域をそれぞれ3x3のサブ領域、計18のサブ領域に分割し、各サブ領域の軟骨厚を自動的に測定した。内側半月板の逸脱幅はMRIデータから手動で測定した。①ΔmJSWと軟骨厚の相関係数が最も高いサブ領域を決定し、②ΔmJSWと内側半月板逸脱幅との相関係数を求め、③ ①と②のどちらの相関係数が高いか検討した。 ①ΔmJSWと軟骨厚は8つのサブ領域で有意に相関し、最も相関係数の高かったサブ領域は脛骨中央内側の0.248であった。②ΔmJSWと内側半月板逸脱幅とも有意に相関し、相関係数は0.547であった。③ΔmJSWと相関係数の95%信頼区間は脛骨中央内側の軟骨厚とは0.168-0.326、内側半月板逸脱幅とは0.486-0.603 であり、内側半月板逸脱幅との相関係数が有意に高かった(p = 6.0×10-44)。これは膝屈曲位により半月板逸脱が大きくなることを示唆している。伸展位と屈曲位での内側裂隙幅の差は、軟骨厚よりも内側半月板逸脱幅がより影響した。本研究成果はEuropean Radiologyにpublishした。
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今後の研究の推進方策 |
膝立位正面レントゲン像での伸展位と屈曲位との内側裂隙の差は何に起因するかに関して検討した。内側裂隙幅を構成するものは大腿・脛骨軟骨と内側半月板であり、内側半月板では逸脱が関与するものと推察される。そこで軟骨厚と内側半月板逸脱のどちらが、伸展位と屈曲位での内側裂隙幅の差に影響するか検討した。 30歳代から70歳代までの561名を対象とした。内側裂隙幅は手動で測定し、伸展位から屈曲位を引いた値を内側裂隙幅の差(ΔmJSW)とした。MRIデータから3D解析システムを使用して、大腿脛骨関節軟骨の内側領域をそれぞれ3x3のサブ領域、計18のサブ領域に分割し、各サブ領域の軟骨厚を自動的に測定した。内側半月板の逸脱幅はMRIデータから手動で測定した。①ΔmJSWと軟骨厚の相関係数が最も高いサブ領域を決定し、②ΔmJSWと内側半月板逸脱幅との相関係数を求め、③ ①と②のどちらの相関係数が高いか検討した。 ①ΔmJSWと軟骨厚は8つのサブ領域で有意に相関し、最も相関係数の高かったサブ領域は脛骨中央内側の0.248であった。②ΔmJSWと内側半月板逸脱幅とも有意に相関し、相関係数は0.547であった。③ΔmJSWと相関係数の95%信頼区間は脛骨中央内側の軟骨厚とは0.168-0.326、内側半月板逸脱幅とは0.486-0.603 であり、内側半月板逸脱幅との相関係数が有意に高かった(p = 6.0×10-44)。これは膝屈曲位により半月板逸脱が大きくなることを示唆している。伸展位と屈曲位での内側裂隙幅の差は、軟骨厚よりも内側半月板逸脱幅がより影響した。本研究成果はEuropean Radiologyにpublishした。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中に掲載された論文の掲載費用について、支払いが、米ドル建てによる支払いであったため、為替変動による差異が発生し、次年度使用金額が生じた。 本件差異については、翌年度分として請求した、研究消耗品の購入、および旅費交通費とあわせて使用する計画である。
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