本研究の目的は変形性膝関節症に対するレントゲン検査の意義を、地域住民コホート研究データを使用し、私たちが独自に開発したMRI3次元解析で明らかにすることである。具体的には①伸展位撮影と屈曲位撮影の内側裂隙の差②脛骨内側骨棘③伸展位撮影と屈曲位撮影の大腿骨内側骨棘の意義を明確にする。 3年目はこれまでの研究成果を踏まえ、関節軟骨厚に着目して早期変形性膝関節症(OA)のMRI3次元解析を行った。OAは、レントゲン像での Kellgren-Lawrence (KL) 分類が1度ないし2度までと定義される。そのレントゲン変化は、全くないか、骨棘があることになる。一方、関節軟骨厚に関してはまだ十分に解明されていない。本研究の目的は、KL分類ごとの軟骨厚をMRIで詳細に解析することである。対象は神奈川ひざスタディの参加者から外側型OAを除いた469人である。KL分類は全自動システム(KOALA)で評価した。軟骨厚は、MRI 3D解析システム(SYNAPSE VINCENT)を使用して、内側大腿軟骨、内側脛骨軟骨とも前方・中間・後方、内側・中央・顆間側の3段3列、計9つのサブ領域を評価した。KL分類内訳はKL0度が308膝、KL1度が70膝、KL2度が75膝、KL3度が13膝、KL4度が3膝であった。KL0度と比較して、内側大腿軟骨厚はKL1度で前方・中央の領域で有意に薄く、KL2度でその顆間側を含む領域でさらに薄かった。内側脛骨軟骨厚は、KL1度で前方・内側と中間・内側領域で有意に薄く、KL2度ではさらに中央側を含む領域でいっそう薄かった。以上によりMRIによる解析ではKL1度で特定のサブ領域ですでに軟骨厚が減少し、KL2度でさらに進行することが明らかになった。
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