研究課題/領域番号 |
21K09274
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅井 秀司 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00770893)
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研究分担者 |
寺部 健哉 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10816870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腱 / 変性 / 代謝リプログラミング / glycolysis / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
腱は自己修復能に乏しく,外傷や酷使により損傷すると軟骨化生や異所性骨化などの変性を生じやすい.細胞内エネルギー代謝は,細胞の分化や増殖を調整する重要な因子であり様々な刺激により変化(代謝リプログラミング)する.研究代表者らはこれまでに,腱損傷部には変性と修復の両方に直接関与する特異的な間葉系幹細胞が誘導されることを明らかにした.本研究では,この間葉系幹細胞の分化における解糖系代謝を中心とした代謝リプログラミングの機能解析を行う.また,腱損傷部の変性および修復に対する代謝リプログラミング制御の作用を検討する.2021年度の研究により以下の結果を得た. ① CD-1マウスのアキレス腱損傷部から単離した損傷腱由来間葉系幹細胞をmicro mass cultureにより軟骨細胞へ分化誘導し,細胞外フラックスアナライザーにより解糖系代謝の変化を検討した.損傷腱由来間葉系幹細胞は軟骨分化誘導するとglycolysisが亢進することが確認された. ② 上記の実験系にglycolysis阻害剤である2-deoxy-D-glucose(2-DG)を添加すると,アルシアンブルー染色のintegrated densityは減少した.また,軟骨分化マーカーであるaggrecan,Sox9,II型コラーゲンの遺伝子発現量は2-DG添加により減少した.これらの結果により,損傷腱由来間葉系幹細胞の軟骨分化にglycolysisが関与することが示された. ③ 本研究ではglycolysisを制御する物質としてヒアルロン酸に注目している.アキレス腱損傷モデルマウスにヒアルロン酸を局所投与したところ, vehicle投与群に比べ異所性骨化の体積が統計学的有意に小さかった.組織学的評価において,ヒアルロン酸投与群ではvehicle投与群に比べ腱損傷部の軟骨様組織および骨様組織が少なかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究成果は,本研究の根幹をなし今後の研究につながるものである.当初の計画と前後している部分もあるが,全体としてみれば研究は概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施を計画していたメタボローム解析は,2022年度以降に行う予定である.正常腱および損傷腱由来間葉系幹細胞の糖,脂質,アミノ酸代謝,TCA回路などの発現解析を同時に行い,解糖系を含む様々な代謝の変化と相互作用を網羅的に解析する計画である. また,ヒアルロン酸の軟骨分化抑制作用におけるglycolysisの関与を検討するため,細胞外フラックスアナライザーにより解糖系代謝の変化を検討し,リアルタイムPCRによりglycolysis関連遺伝子の発現を検討することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の研究経費としてメタボローム解析を行うための分析機器使用料1,000千円を計上していたが,実験計画が前後し2021年度にメタボローム解析を行わなかったため次年度使用額が生じた.2022年度以降にメタボローム解析を行う予定である.
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