研究実績の概要 |
Kruppel-like zinc finger transcription factor (KLF)は哺乳類の細胞分化や発生において様々な役割を果たしており、KLF15がPPARγの発現を介して脂肪細胞の分化を制御しているという報告がある。本研究の目的は変形性膝関節症モデルのマウスにおけるKLF15の影響を明らかにすることである。方法としてタモキシフェン誘導性軟骨特異的KLF15ノックアウト(KO)マウスを作成し、4週齢でタモキシフェンを5連日腹腔内投与した。10週齢の雄のKOマウスおよび野生型マウス(WT)に、Shamおよび半月板不安定化(DMM)手術を行った。Sham群は術後8週、DMM群は術後1日、1週、4週、8週で膝関節を回収し、サフラニンO染色、免疫組織化学染色(PPARγ、pIKK α/β、MMP-13、ADAMTS5、FOXO1、LC3b)、TUNEL染色を行った。また胎生18.5日齢のKOマウスおよびWTマウスの軟骨細胞を採取しIL-1βで刺激し、q-PCRでPPARγ、MMP-13、ADAMTS5、FOXO1、LC3bのmRNA発現量を測定した。 結果であるが、関節症スコアは術後8週でKO群が有意に高かった。陽性細胞率は全てのタイムポイントでKO群がpIKK α/β、MMP-13、ADAMTS5は有意に増加し、PPARγ、FOXO1、LC3bは有意に減少を認めた。TUNEL染色の陽性細胞率は全てのタイムポイントでKO群が有意に増加した。術後4週および8週のKO群と術後8週のWT群でShamと比較しPPARγ、FOXO1、LC3bの有意な減少と、pIKK α/β、MMP-13、ADAMTS5、TUNEL染色での有意な増加を認めた。IL-1β刺激したKO細胞でKLF15, PPARγ, FOXO1, LC3bの発現減少およびADAMTS5, MMP13の発現増加を認めた. KLF15欠損はPPARγの発現減少を介して変形性関節症を増悪させると考えられる。
|