研究課題
ビタミンD(VD)は骨の健康を維持するのに重要な栄養素である。これまでの血中ビタミンD(25OHVD)濃度の疫学調査では、その8割が不足・欠乏状態であることがわかっているが、それに関連する因子に関する調査はこれまでにほとんどない。また、コロナ禍において人々の行動は変容し、健康面において様々な影響を受けているものと推察される。骨の健康に重要なビタミンD(VD)は日光浴もしくは食品によって体内に供給される。2022年度は先ず、新型コロナパンデミック前後の2019年7月と2020年10月に和歌山県かつらぎ町において収集したデータの解析を行った。解析対象者は、男性79名(70.4±9.5歳)、女性148名(67.4±9.4歳)で、パンデミックに伴う外出自粛を行った人は各々60%と80%存在していた。男性と女性の25OHVD (ng/ml)は2019年度 22.4±5.1、16.7±4.6であったのに対し、2020年度は25.5±6.1、20.7±6.1で増加していた。男女別のカテゴリーについても2019年度は充足:不足:欠乏の割合(%)が各々8:65:28、1:22:77であったのに対し、2020年度は23:57:20、7:48:45で有意に変化していた。25OHVDの増加量に関連する因子を重回帰分析で検討した結果、2019年度のBMI低値(標準β=0.14)と2020年度の食物中ビタミンD摂取量(標準β=0.17)が有意に関連していることが判明した。このことから、健診参加者は前年度の結果を受け、食事によって25OHVDを増加させたものと推察された。2022年度はさらに、新たにかつらぎ町内の成人407名、中学生289名、小学生721名を対象に運動器検診を実施した。生活習慣、運動習慣、併存疾患、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)骨折歴、骨量(超音波法)、身体能力(ロコモ診断項目)、血液生化学(25-OHビタミンD含む、小学生は対象外、中学生は希望者のみ)を調査し、現在データベースを構築中である。
2: おおむね順調に進展している
2022年度には運動器検診を実施し、解析に十分なサンプルサイズのデータを確保することが出来た。
2023年度は2022年度に収集したデータの横断的解析を行う。また、2020年度以前に収集したデータとのリンケージを行った上で縦断的な解析を実施する。さらに、成人の一部と小中学生を対象に追跡調査を実施する予定である。
コロナ禍のため2021年度には検診を実施出来なかったことが2022年度においても次年度使用額が生じた理由である。2023年度請求した助成金と合わせて追跡調査を実施するとともに、オープンアクセスでの論文出版、成果発表の旅費などに使用する計画である。
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