本研究の目的は、関節リウマチで骨破壊に寄与するような炎症性の破骨細胞の培養条件を見いだすことである。そこで従来から頻用されてきた(1) M-CSFの他に、近年報告された(2) GM-CSF + IL-4存在下で培養したヒト単球、また(3) GM-CSFと他の因子の存在下で培養したヒト単球などを前駆細胞として利用した。(1)-(3)いずれもM-CSF + RANKL刺激下で培養するとTRAP染色陽性多核細胞となり、骨吸収活性評価プレートにより骨吸収能を示した。ただし(2)の条件においてはM-CSF + RANKLの環境に移す前にM-CSF単独の存在下で培養することが必要であった。またこの細胞はIL-4が低濃度であっても存在すると細胞数が減少し、多核細胞が分化しないことが明らかとなった。このことから、IL-4により誘導される前駆細胞が炎症性破骨細胞に分化するためには、前駆細胞の分化環境と破骨細胞の分化環境が完全に独立している必要があることが示唆される。一方で低濃度のTNFやGM-CSFが存在していても多核細胞の分化は観察されたため、病変局所でTNFやGM-CSFが存在していても破骨細胞は分化しうることが確認された。 更にヒト破骨細胞の共存培養系の実験を行った。ヒト単球を関節滑膜由来線維芽細胞と共存培養し、ビタミンDなどを加える培養を行ったところ、単球由来の多核細胞はTRAP染色にごく僅かに染まるのみであり、骨吸収能も非常に乏しいことが確認された。2次元培養ではヒト破骨細胞を分化させることは困難であることが確認され、3次元培養に移行している。
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