研究課題/領域番号 |
21K09285
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
奥田 貴俊 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00348955)
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研究分担者 |
池田 通 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211029)
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (80362854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Masquelet法 / induced membrane / 人工骨 / 巨大骨欠損 / 多核巨細胞 |
研究実績の概要 |
Masquelet法においては、一期手術で挿入したセメント周囲に誘導される線維膜(induced membrane)が成功の鍵となる。我々は「induced membraneの生物学的な意義は、骨欠損部位に異物反応を起こさない骨髄線維組織を形成させ、骨外から異物反応を起こす線維組織が侵入することを防ぐ隔壁である」という仮説を立てた。本研究ではこの仮説を細胞生物学的に明らかにするとともに、一期手術で挿入する骨セメントスペーサーの代わりに、テフロン膜で覆った骨欠損部位に、材料工学研究者と共同で開発中の新規超多孔質リン酸カルシウムセメントスペーサーを移植し、骨髄線維組織および血管内皮細胞を豊富に含むスペーサーを形成させ、それを二期手術時に自家骨と混合して再移植することでMasquelet法の治療成績を上げ、かつ自家骨との混合移植における人工骨の比率をより高めることを 目的とした。 先ずはテフロン膜で隔離した骨欠損部位に移植した超多孔質リン酸カルシウムセメントスペーサーを4週後に摘出し、異物反応を確認した。その結果、テフロン膜で隔離することでinduced membraneと同等の異物反応抑制効果があり、またテフロン膜の周囲に線維膜が形成されることが分かった。 次に従来のMasquelet法との治癒過程の差を明らかにするため、二期手術時に摘出した新規超多孔質リン酸カルシウムセメントスペーサーと自家骨を1:1で混合して再移植し、テフロン膜の外周にできているinduced membrane内に移植して閉創した。二期手術後8週の経過では、新生骨、TRAP陽性細胞ともに旺盛に認めるものの骨欠損部の骨癒合が得られている個体はなかった。また、骨欠損部両側の骨断端が閉鎖しているモデルでは、新生骨、TRAP陽性細胞ともに乏しいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットモデルの場合、8週の時点で骨欠損部両側の骨断端が経時的に閉鎖してしまう。その場合は8週以降で新生骨、TRAP陽性細胞ともに乏しくなってしまい、最終的な骨癒合が得られない。そのため骨断端を閉鎖させない工夫が必要であったため。
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今後の研究の推進方策 |
二期手術時に摘出した新規超多孔質リン酸カルシウムセメントスペーサーと自家骨を1:1で混合して再移植したモデルは、preliminaryには従来Masquelet法よりも豊富な新生骨を認めた。先ずは移植組織と破骨細胞、骨芽細胞との共存培養を行い、骨代謝活性の経路を明らかにする。最終的には、この盛んな骨代謝を維持するように、骨欠損部分の両骨端が閉鎖しないような工夫が必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規超多孔質リン酸カルシウムセメントスペーサーの作製が遅れ、次年度に共存培養、骨形態計測が持ち越されたため。
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